グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●我慢できない！

　神魂の影響でハグ天国（一部地獄、あるいは苦行）状態な校内を見た奈良橋博美は「こんな恥ずかしいことができるか！」と叫び、ハグしたい気持ちを必死に堪えている。
「精神滅却すれば、火もまた涼し、という言葉もある。我慢できるところまで我慢しよう」
　神魂の影響が原因なら羽目をはずしてもいいのではないのかと思ったが、甘いことを言っていると、際限なくなってしまう。
「ああ、苦しい。とりあえず、何かして我慢せねば！　猫の数を数えるのはどうだろうか」
　我慢する手段として、三毛猫が１匹、虎猫が２匹、シャム猫が３匹、ペルシャ猫が４匹……と数え始める。
「合計で何匹だ？　えっと……うんと……ああダメだ！　気分は紛れるが頭がこんがらがる！」
　頭を抱え、次の手段に。
「余計なことを考えてしまうからダメなんだ。精神統一のために瞑想するのはどうだろうか」
　これならうまくいく、とその場で座禅を組み、心を無にする努力を。
（無・無・ム・夢・鵡・むう……ハグ。って、なんでハグ！？）
　これもダメだ！　と瞑想を中断。
「危なかった。なぜそっちに思考が向くんだ。座禅したまま、ろっこんで飛翔してのハグは高等すぎるだろう」
　それはそれで面白いかも、と一瞬、考える。
「冷静に考えれば、座禅したままハグはできないな。ある意味、恥ずかしい……」
　別の我慢しないといけないことをすれば、そっちにかかりっきりになりハグのことを忘れられる。
「これでいこう！」
　そこで思いついたのは、おもいっきり厚着をし、暑さを我慢することだった。
「心頭滅却すれば火もまた涼し、っていうしな」
　動き回りながら暑さに耐えていたが、汗が水に見えてきたことで余計ハグしたくなってきた。
「もう我慢の限界だぜ！」
　誰かにハグしたい欲求に負けた博美は、厚着したまま猛ダッシュ！

　彼女と並んで走っているのは、同じくハグしたい欲求に駆られ、猛牛の如く走り回る尾鎌蛇那伊。　
「君も誰かとハグしたいの？」
「ああ、誰かにハグしたくて仕方ないんだ！」
　廊下を走り回っているふたりだったが、ろっこんで酔っぱらえるようにした水が入っている瓢箪を振り回し、酔ってハグする相手を探す酒浸朱蘭とぶつかってしまった。
「ごめんなさい、大丈夫？」
　謝りながら立ちあがった蛇那伊は、ズボンの汚れを掃った後に朱蘭を立たせようとしたが「飲もうぜ～！」と絡まれた。
「飲むって……あたし達、未成年よ！」
「大丈夫～水だから～」
　蛇那伊に絡んだまま、瓢箪の飲み口を彼の口に強引に入れる。
「あら、ホント」
　水なのにどうして酔っているのかしら？　と思った途端、蛇那伊は顔が熱くなった。
「あたし～、なんらか酔ったみたいだけど～とってもしあわせ～」
「そうだろ～？　あたしも幸せだせ～！」
　酔っぱらったクラスメイトなふたりは、しばらく幸福感に酔いしれていた。

「な、何なんだこいつら……」
　博美は、巻き込まれは御免だと立ち去ろうとしたが蛇那伊に捕まってしまった。
「一緒にしあわせ～になろうぜ～！　それともなにか～？　あたしの水が飲めないのか？　えぇ！？」
「さ、酒だぁ！？」
「水でしょ、朱蘭ちゃ～ん」
　ヤバい！　と逃げようとした博美だったが、ハグを一旦やめたふたりに挟まれた。
　博美は羽交い絞めする蛇那伊から逃れようとするが、厚着のため、思うように動けず。
「んぐっ！」
　朱蘭に強引に水を飲まされた博美はむせてしまった……かと思いきや、ほろ酔い気分に。
「なんか～俺もほわ～んな気分だぜ～」
「皆でほわ～んな気分に浸りましょう～」
「ハグも酔いも我慢するな～！　蛇那伊も博美も楽しもうぜ～！」
　３人は酔っ払っているが、飲酒しているわけではないので問題はない……はず。多分。