グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●ときめきボーイズハグ

　酔っ払い４人組による気持ち良さそうなハグの雰囲気が校内に充満したからなのか、生徒達や教師のハグ欲求はますます強まって来た。
　次の授業の教科書を忘れたので、休み時間に従兄弟の篠崎響也に借りに来たトーマス・ジャスティンもそのひとりだ。
　トーマスだけでなく、響也や周囲にいる生徒達も例にもれず。
「響ちゃん、数学の教科書貸して」
「しょうがないな。今、持ってくる」

　机から取り出した教科書を、廊下で待っているトーマスに渡そうとしたがどこにもいない。
「どこに行ったんだ？」
　辺りを探すと、トーマスは女子生徒にハグされていた。
「女の子にハグされるのは良いものだね」
　満更でもない表情でハグされているトーマスを見て、自分からハグしたなと呆れる響也だったが……。
（何でかわからんが、トーマスに抱きつきたい……）
　気付いた時には、真正面からトーマスを抱きしめていた。
「響ちゃんからハグしてくるなんて珍しいね。君なりの愛情表現かい？」
　疑問に思うも、トーマスはレアな出来事としてハグを堪能。
（な、なんだよこれ！？）
　突然のことに困惑する響也は、トーマスにハグしている女子生徒にも抱き付きたくなったが、ハグしまいと抵抗するも抱き付いてしまった。
「わ、悪いっ！」
　謝罪して女子生徒を優しく引き離すが、良く見ると、響也にハグされたままのトーマスは別の生徒に抱き付いていた。
（なんだこれ？　またろっこんのせいか？）
　響也のろっこんは、ろっこんを使うと決断すると、瞬間的に動作を加速させるものだ。
　ハグしたいという決断のせいで、トーマスをハグしてしまった響也が当惑しているが、ハグされた本人はノリノリだった。
（そういえばこいつ、元から良く人にハグしているな。主に俺にだけど）
　トーマスは、生徒達がハグしているおかしなことが起きているのは、神魂の影響だとわかっているようだ。
「いや～、私もほんとは、こんなことしたくないんだけどね！」
　とうそぶきながら、積極的に攻めてハグしまくっている。
（こういう時でないと、響ちゃんにハグしてもらえないからね。今の私はもう何も怖くない！　どんと来い！）
　普段は日本人的な羞恥心で抑えているハグしたい欲求だが、神魂の影響で一気に爆発。
　神魂という言い訳ができた今、トーマスにできないことは何もない……はず。
　ハグされている響也は、顔を赤くして「や、やめろよ……」と恥ずかしがっている。
「恥ずかしがっている響ちゃん、可愛い。赤信号、皆で渡れば怖くないって言うでしょ？　こういうのは恥しがったら負け。楽しんだもの勝ちだよ」
「そのフォロー、微妙にずれてないか？」
「気のせいだよ、響ちゃん。ハグを楽しもう、ね？」
　情熱的なハグをされながら、俺、もう少し抵抗しないとな……と落ち込む響也だった。

　楽しもうと言い出した本人は、響也をハグしたままクラスメートの花椿涼太郎に抱きついていた。
「私の腕はふたつある！　ひとりと言わず、ふたりでもまとめて抱き締められるよ！　さあ、おいで！」
　響也に抱きつかれつつも、他人へのハグテロを敢行しているトーマスはすごく楽しそうだ。
「寝不足で疲れ気味な人には、癒しと疲労回復をもれなくプレゼントするよ！」
　普段は女性優先に動くトーマスだが、神魂の影響でハグすることが最優先になっているので男女問わず抱きついている。
　トーマスに抱きつかれている涼太郎は、トラウマが吹っ飛んだかのようにほわ～んとした気分に。
（いつまで抱きついているんだ……）
　トーマスがいつまでも『博愛の抱擁』を発動してハグしている相手から離れないので、響也はため息をつき「悪い」と相手に謝り、トーマスを引き剥がす。
「お前、楽しんでるだろ」
　いい加減にしろ、と軽くトーマスに腹パンするが、ハグした相手をときめかせたいと一向にやめる気配なし。
「……勝手にしろ」