グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●猫に惹かれて、導かれて

　浅井幸太先生が直風満帆ちゃんを抱きしめ、高野有紀先生に怒鳴られる出来事が起きた日。
　朝から誰かにハグしたくなる愛あふれる神魂の影響は、既に寝子島に広がっていた。

　このお話は、寝子高で起きたほんの一部である。

「今日も、魅惑のネコ集会巡りに出発なのだ～♪」
　５時に起きジャージと陸上部Ｔシャツに着替えた後木真央は、猫鳴館裏手の畑と鶏の世話をすませ、いつもどおり６時半に猫集会へ。
「にゃにゃにゃがおー！」
　そう叫んで両手を丸め、三毛猫のがおーを召喚すると頭上に乗せ出発進行ー！

　裏手から表参道商店街へ走ってきた辺りで、急に世界がキラキラに包まれたような気分になったかと思えば、ハグしたい衝動が込み上げてきた。
「何か頭上の魅惑の腹肉が……何かこう……がおー！」
　頭に貼りついていたがおーを引っぺがすと、ガバッとハグし始めた。
「ん～、いいハグ心地なのだ～！」
　ハグついでに、がおーのお腹に顔をスリスリ。
「何かもう……何かもう辛抱たまらんのだ！　幸せに火がついたのだ！　すべてのおネコさまに幸せをお裾分けせねばなのだ～！」
　猫達に幸福感をお裾分けしたくてたまらない真央は、がおーをハグしたまま猫集会にダッシュで向かった。
「おネコさまー、待ってなのだ～♪」
　その途中、彼女の目に入る猫は抵抗して噛みついたり引っ掻いたりしたが、真央はお構いなしにハグ。
「過激な愛情表現なのだ～♪　でも、それがたまらないのだ～♪」
　噛み跡、引っ掻き傷だらけになっても、恍惚な表情で猫をハグしまくる真央はとても幸福そうだった。

　いつものように普通に小学校に行く柚瀬玲音は、猫に呼ばれた気がしたので追いかけた。
「ねこーが、にゃーんとボクをよんだのはどうしてかな？　なにかあるのかな？」
　ワクワクしながら追いかけているうちに、寝子小に辿り着けないほど、道に迷ってしまった。
　行動範囲が広いので、迷うことは良くある。
「ねこー、みつけたー！」
　見つけた猫が入り込んだのは寝子島高校正門。
　登校時間ということもあり、高校生のお兄さん、お姉さん達が続々と正門にやって来た。
「こっそりと入れば、だいじょうぶだよね？　いまからがっこうにいっても、ちこくして、せんせいにおこられちゃうし」
　猫を追いかけ、お兄さん、お姉さん達に紛れ込んで寝子高に潜り込む玲音だった。

　その頃、真央はというと……。
「君、学校はどうしたの？」
　パトロール中の警察官に声をかけられたことで、ほわ～んな気分に浸っていた真央は正気に戻った。
「はっ！　真央ちゃん、何をしていたのだ？」
　ハグしている間に、始業時間はとっくに過ぎていた。
「サボっていないで、早く学校に行きなさい」
　注意されている途中、真央はハグしたい衝動を抑えきれず警察官に抱きついた。
「通りすがりのハグテロ発動なのだっ！」
「な、何をワケわからないことを！？　離れなさい！」
　というが、ハグされた警察官も真央に抱きついている。
「学校に行かないといけないのだ！　このまま行くのだ！」
　警察官とハグした状態で、寝子高に向かって歩き出す真央。
　その途中、目についた人にハグしたり、ハグされたり。
（やっべぇのだ……女の人のフカフカさも、男の人のゴツゴツさも幸せ倍増なのだ……。ＰＥＣの気持ちが分かるのだ……）
　老若男女、様々な年代の人にハグしたり、されたりしながらそんなことを考えてしまう。
「真央ちゃん、ちっぱいですまぬのだ～！」
　世界中から後光が射して幸せな状態だったが、ちっぱいな点だけが悲しくなり涙が出た。

　真央は無事、寝子高に辿りつけるのだろうか。

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