グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●これが本当のベアハッグ？

　１限終了のチャイムがなると同時に、保健室のベッドで寝ていた花椿涼太郎が目を覚ました。
「ここは……」
「気が付いたのだ？　噴水で倒れたから、真央ちゃんと一緒に来たおまわりさんにここまで運んだのだ」
　噴水で倒れたとはどういうことだろう？　と気を失う前のことを思い出す。
　尾鎌蛇那伊にベアハッグされて気絶。
　気が付いたかと思えば、小学生の柚瀬玲音にハグされ、その最中に警察官とハグしたままの後木真央が衝突したことでまた気を失った。
　思い出しただけで、涼太郎は身震いした。
「見かけない顔なのだ。　転校生なのだ？」
「あ、ああ、そうだよ」
「そうなのだ。真央ちゃんは、１年９組の後木真央なのだ」
「ぼ、僕は１年７組の花椿涼太郎だよ！　この秋から寝子高に通いはじめたばかりだよ。よ、よろしく！」
　照れながらも、笑顔の真央の目を見て自己紹介をする涼太郎。
「そ、そろそろ教室に戻らないと！　後木さん、僕が気が付くまでいてくれてありがとう！」
　お礼を言うと、涼太郎は急いで保健室を後にした。
「涼太郎ちゃんは恥ずかしがり屋さんなのだ」

「無性に技をかけたい気分だ……特にベアハッグを……」
　制服の上に熊の毛皮を羽織っている邪衣士は、ハグしてほわ～ん、な状態の校内を見て、ふとそう思った。
　その横を涼太郎が走っていたのだが、ベアハッグしたい欲求にかられた士は気付かず。
「あれは士ちゃん？　士ちゃ～ん！」
　士を見かけた真央は、挨拶代わりのハグを。
「な、なんだいきなり！」
「今日はハグして挨拶したい気分なのだ。士ちゃんもハグして幸せになるのだ！」
　真央に続けといわんばかりに、何人かの生徒が士に抱きついてきた。中には熊皮に抱きつこうとする生徒も。
「皆、何故、俺に抱きついてくる！？　熊皮か？　熊皮を狙っているのか！？　そうはさせんぞ！」
　俺はクマのぬいぐるみじゃない！　黄色いのとか、海の国のぬいぐるみのほうがいいだろ！　と突っ込む。
「しかし何故だ……抱きつかれそうになるのは神魂の影響か？　熊の毛皮をモフるのは構わないが、俺に抱きつくのは勘弁してもらいたい！」
　士にハグを迫って来た生徒の大半が女子だったので、クマのぬいぐるみだと思われたのだろう。
「とりあえず、手近な奴にベアハッグをせねば！　でないと落ち着かん！」
　誰かおもいっきりハグできるのは誰だろうと考える。
（体育の先生なら、思いっきりやっても問題ないだろう）
　そう考えた士は、体育教師の誰かにハグすることに。体力があるので、ある程度は耐えられるはず。

　ちょうどいいいところに、ふたり揃って職員室に向かう浅井先生と高野先生に会った。
「浅井先生、高野先生！　ハグさせてください、お願いします！」
　そう言うや否や、士は浅井先生におもいっきりベアハッグをかます。
「い、いきなり何を……！」
　容赦なく締め付けるので、浅井先生はジタバタしている。
「カカカ、美しい愛情表現だな、邪衣。浅井先生、生徒とのスキンシップは大事だぞ」
　男子生徒とのハグは容認しているのか、高野先生は、楽しそうに笑ってその様子を見ている。
（今朝のこと、まだ根に持っているんだな高野先生……）
　そう思いながら、浅井先生は意識が遠のいていった。
「士ちゃん、もうやめるのだ！　幸太ちゃんセンセー気絶しちゃうのだ！」
　熊皮にハグしたままの真央がやめさせようとするが、士の動きは止まっていた。
「どうしたのだ？」
　よーく見ると……士は、浅井先生をベアハッグしたまま眠っていた。
　寝不足気味ので、立ったまま居眠りしてしまったのだ。
「高野先生、お願いです。邪衣を離してください」
「しばらくそのままでいろ」
　カカカと笑いながら、懇願する浅井先生を放置し、高野先生は職員室に行ってしまった。

　浅井先生は、眠ったままベアハッグしている士と真央にハグされたまま、他の生徒達にもハグされていた。