グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●授業中の楽しみ

「うむむ、今日は朝から、誰かにハグしたい気分なんだよね」
　普段からスキンシップ多めの高梨彩葉だが、今日は一段と誰かとスキンシップしたい気分に。
　登校するなり、正門や靴箱の前、廊下といった至る所で生徒や教師がハグしていたのを見たので、彩葉もハグしたくなったのだろう。
　明るくてノリが良い彩葉は、男女問わず、寝子高に多くの友人がいる。
（誰かとハグして、もっと交流の幅を広げたいな）
　これを機にともだちが増えたら、寝子高ライフがもっと楽しくなりそうと考えるとワクワクしてきた。

（浅井の奴……自分の教え子にいきなり抱きつくとは……しかも私の目の前で……）
　直風満帆に抱きついた出来事を、高野先生はまだ根に持っている。ムスッとしながら、１限の体育の授業を行う体育館に向かっている。
「高野先生、発見！　ちょっとスキンシップするとしよう」
　背後から高野先生にそっと近づき、距離が縮まったところでハグする彩葉。
「高野先生、おはよーございます！」
「ひゃんっ！」
　男勝りな高野先生にしては、珍しく、女の子っぽい可愛い声だった。
「た、高梨っ！　急に抱きつくなっ！　びっくりしたぞ！　お、おはよう……」
　私も浅井先生のようなことをされるとは……と、ハグされたまま自己嫌悪に陥る高野先生。
（生徒にスキンシップされた、と考えることにしよう。浅井先生もそうだったんだ、きっと）
　俯き、顔を赤くして浅井先生ハグは、彩葉がしているようなことだと考え直すことに。

「生徒とのスキンシップは大事ですよ、高野先生。何だか不機嫌そうですけど、何かあったんですか？」
「別に、何も……」
「高野先生って、身長高くて、きりっとしてかっこいい先生だよねー。私も先生くらい、身長が伸びればいいんだけどなー」
　彩葉のように自分の気持ちに素直になれたら、浅井先生とうまく付き合えるかもしれない……というが、弟を弄る姉として。
　高野先生は彩葉にハグされたまま、そんなことを考えていた。
「高梨は背が高くなりたいのか？」
「はい。高野先生みたいになりたいなー、って思っています」
　人懐っこい笑顔、憧れの視線で高野先生の顔を見て、彩葉はそう答えた。
「身長を伸ばすのに大事なのは栄養、睡眠、運動の３つだ。運動するなら、バスケットボールが良い。バスケットボール部に……」
　身長を伸ばす方法を教えてくれるのはありがたいが、入部を勧められたのは意外だった。
　はっきりと断りきれないので「いろいろ教えてくれてありがとうございました！」と早口でお礼を言って勧誘を切り抜けた。
　お辞儀して立ち去る彩葉だったが、１限は体育なので、高野先生と体育館でまた会うことになる。

　授業中にも関わらず、神魂は誰かに抱きつきたくなる影響を及ぼしていた。
（ここでもハグが……）
　授業を放棄してハグしている、満更でもない表情でハグされている、離してと嫌がる生徒がいたりと、ハグの反応は様々。
　１年４組の女子は体育館でバスケットボールをしていたが、生徒の何人かが途中でやめてハグしたり、ということが。
「私の他にも、ハグをしてる人がいるねー。これも神魂の仕業なのかな？　無害そうだからいいけど」
　そう思っている彩葉自身も、クラスメートにハグしていた。
　誰かにハグしたいという気持ちはあるが、無理矢理はダメだと嫌がる人にはしない。
「ねえ、ハグしようか？」
　悪乗りでクラスメートの女子にジリジリする素振りを見せたりしてハグを楽しむ。
　男子にハグされそうになったが、気持ちを抗いハグ拒否。
（さすがに恋人以外の異性を抱きしめる勇気はないもの。彼とだったらハグしてもいいけど）
　その頃、授業中の彼はくしゃみを。

　体育の授業中に、多くのクラスメートとの友情が深まった彩葉だった。
「この時間がもっと続くといいなー。すっごく楽しいし」