グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●幸福感はトラウマに？

「何だか急にハグしたくなったわね。神魂の影響かしら？」
　尾鎌蛇那伊は、害がなければこの状況を楽しんでもいいわよね？　とハグする相手を探し出す。
「その前に……汚れた服装でハグしたら、相手が可哀想だものね。あたしも、そういうのは嫌だし」
　ハグしたくてたまらない気持ちを抑え、まずは身だしなみをチェック。
「これでいいわ。あたし好みの可愛い子、綺麗な子がいるかしら？　さあ、ハグしにいくわよ！」
　髪型と服装を整え終えると、誰彼構わずハグすべく突撃！
「さあ、いらっしゃい！　可愛がってあげるわ！」
　蛇那伊が走り去った場所の気温が少し上がった……ような気がした。

「ほえー、やっぱりこーこーのおにいちゃんたち、でっかいなぁ……ねこーはどこにいったかな？」
　猫を追いかけていたが、見失ってしまったので校内を探検することにした柚瀬玲音は、誰かに見つかる危険より、何か楽しいことが起きないかというワクワクな気持ちでいっぱいだった。
　誰にも見つかることなく、北校舎と南校舎の間にある噴水の近くに辿り着いた。
「ちょっときゅうけいー。こーこーってひろいな」
　体力使い果たすといっぱい探検できないからね、と体力温存。
　そんな彼女に、楽しく、ビックリするような出来事が起こるのはもう少し先のこと。

　それと同時刻。
「はーーーっはっはっは！　寝子島高校に新たに咲いた大輪の華、それがこの花椿涼太郎だよ！　さぁ、僕の美しさに存分に見とれるがいいさ！」
　黒髪のショートカット、左目の目元の泣きぼくろ、上品さを兼ね備えた外見、細身だが引き締まった身体。
　20歳くらいに見える涼太郎は、校内を歩き回っては生徒達に美しさを振りまいているので、すごく目立つ。
「あぁ、今日も美しい僕……！　なんて罪作りなんだ……！」
　窓ガラスに映る自身の美しさをチェックし悦に浸っている最中、ただならぬ気配を察知して急に寒気が。
「綺麗な顔だわ、あの子にしましょう」
　蛇那伊は、彼にハグすることに決めると猛烈アタック、もとい、ハグすべく突撃開始。
「ハグさせなさい！」
「わっ！」
　正面からいきなりハグされた涼太郎はビックリ。
　女子生徒かと思ったが、良く見ると、相手は筋肉質のオネエ口調の大柄な男子生徒。
（女の子でなくて良かった……）
　涼太郎、女性とのスキンシップが苦手なシャイボーイだった。
「こ、この学校では、ハグが挨拶なのかい……！？」
「そうみたい。君、見かけない顔ね。転校生かしら？」
「ああ、そうだよ。はっはっは、僕のこの美しさ、抱きしめたくなるのも無理はないね！」
　二学期から寝子高に通うことになったと説明する涼太郎は、良く見ると蛇那伊の好みだった。
（おもいっきりハグして、頬ずりもしたいわ）
　無意識のうちに、蛇那伊はベアハッグしていた。
「はっはっは、過激なスキンシップだね！」
　ハグされ続けていたら気絶しそうと涼太郎は脱出を試みるが、失敗に終わった。
「あたしから逃げられると思った？　甘いわよ」
　自分好みの涼太郎の反応が可愛くなり、頬ずりもする蛇那伊。
「い……いだ……い……！」
「ごめんなさい。でも、こういう幸せはしっかりかみ締めないとね？」
　蛇那伊曰く。ここでとろけちゃったら、しばらくハグできなくなるじゃない！
　涼太郎は、ベアハッグされたままトロ～ンとした表情で気絶してしまった。

「あらあら、気持ち良さそうにダウンしちゃったわね。もう少し楽しめると思ってたのに」
　ハグした涼太郎を廊下の壁にもたれかけるように座らせ、蛇那伊は次のターゲット探しに。
　気持ち良さげに見えるが、気絶している涼太郎は、オネエにハグされる悪夢に苛まれていた。
　神魂の影響は、彼にトラウマを与えてしまったようだ。

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