グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●受難は続く

「ひ、酷い目に遭った……」
　尾鎌蛇那伊の過激なハグの最中に気絶し、気が付いたら教室の壁にもたれかかって座っていた花椿涼太郎。
「ここにいたら、また誰かにハグされそうだ。外に出よう」
　誰かに会わないよう、コソコソと涼太郎は校舎を出た。
　外に出ると、おもいっきり新鮮な空気を吸う。
「ああ、やっとで落ち着いた……」
　あそこなら気分がもっと落ち着くかもしれないと、北校舎と南校舎の間にある噴水に行くことに。

　誰もいないと思っていたが、先客がいた。
　見知らぬnekomimiキャスケット帽にハーフパンツ姿の銀髪ポニーテールの少女が噴水前にいたので、転校生かと思い声をかける。
「はーーーはっはっはっは！　僕は花椿涼太郎だよ！　君も僕と同じ転校生なのかい？」
「ううん、ボクは柚瀬玲音。しょうがく１ねんせいだよ」
　小学生がどうしてここに？　という疑問より、玲音が男の子か女の子なのか。
　そっちのほうが涼太郎は気になって仕方がない。
「おにいちゃん、ねこー、みなかった？」
「ねこー？」
「ねこーだよ。ボク、ねこーをさがしにここにきたんだ」
　ああ、猫か、と納得する涼太郎。
「小学生がここにいちゃ駄目じゃないか。早く小学校に戻りたまえ」
「えー、ねこーさがすー！　ぜったいみつけるー！」
　戻れと言ってもきかないので、涼太郎も一緒に探すことにした。
（本当はひとりでいたい気分なんだけど、小さい子を泣かせたくないしね）

　探しに行こうか、と涼太郎が歩き出すと、何故だか玲音にハグしたくなってきた。
（この感覚はなんなんだ……！）
　ハグしたい気持ちを抑えようとするが、身体が勝手に動きだし、気づいた頃にはハグしていた。
「おにいちゃん、なんでハグするの？」
「あ、ああっ、すまない……！」
「こういうのって、セクハラっていうんじゃないのかなー？」
「セクハラって……き、君、女の子なのかい？」
「そうだよー」
　何ー！　と心の中で叫んでいるが、心地良さには逆らえず。真っ赤になりながらも、ハグの感覚にとろけるシャイボーイ。
　セクシーなお姉さんだったら、鼻血を出しながらのハグになっていたかもしれない。
　このままだとどうなるんだ？　と不安がる涼太郎に、追い打ちをかけるような出来事が起きた。
「助けてなのだー！」
　警察官とハグしたまま登校した後木真央が、同じくハグしたままの涼太郎と玲音に衝突。
「いったーい！」
「い、一体、何が……」
　ぶつかった衝撃で、４人がハグした状態になってしまった。
「はっはっは、僕が美しいからって抱きしめたい気持ちはわかるよ……！　で、でも……ちょっと過激すぎるかな……？」
　逃げ出そうとするが、真央と玲音にのしかかられた状態でハグされているので逃げられず。
（これじゃあ、さっきと似たようなパターンじゃないか！　ああ、僕はなんて不幸なんだ……！）
　涙を流し、己の不運さに嘆く涼太郎。

　正気に戻った警察官が真央と玲音を引き離したことで、不運から解放された涼太郎は真っ白に燃え尽きたまま倒れていた。
「このままじゃ駄目なのだ。保健室に運ぶのだ」
　真央に案内してもらい、警察官が涼太郎をおぶって保健室に運んだ。
「あ、ねこー」
　探していた猫を見つけたので、玲音は追いかけた。
「つかまえたー！」
　猫をハグし、幸せいっぱいな笑顔に。
「ボク、ねこーがいっぱいいるから、ねこじまがすきー！」

　猫にハグハグして幸せな時間は、警察官に見つかってしまったことで終わった。
「お嬢ちゃん、小学生だよね？　学校はどうしたのかな？」
「ねこーさがしでわすれてたー」
「ちゃんと行かないと駄目じゃないか」
　控えめに注意する警察官は、猫をハグしたままの玲音を寝子島小学校に連れて行った。
（もっと、おにいちゃん、おねえちゃんたちとあそびたかったなー。またこようー）