グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●衝動が止まらない

　宇佐見望月は、部室の鍵を浅井先生から受け取ろうと職員室へ。
「うぇーい、こーちゃんセンセ、放課後の部活の連絡で来ました。俺様、鍵開け当番なんで鍵くださいっ！」
　手を差し出すが、浅井先生は職員室の机に突っ伏したまま動かない。
「どうしたんすか？　こーちゃんセンセ」
　具合が悪いんすか？　心配した望月は、浅井先生を揺すって起こそうとするが反応無し。
　その時、急にハグしたくなったので思わずしていまったが、浅井先生はされるがまま。
「……うん、俺様よりちっちぇえ。うん、自信出る……」
「何の自信が出るんだ……？」
　何の反応も示さなかった浅井先生が喋り出したので、望月は少し驚いた。
「え？　あ、いやぁ、何だ……『漢は背の高さでは決まらない』って、しみじみ思ってただけっす」
　というが、ふたりの身長は対して変わらない。
「こーちゃんセンセ、今日の練習メニューとか聞いていっすか？」
「そこのメモに書いてあるから、その通りにやってくれ……。部活には後で顔を出す……」
　ハグしたり、されたりの繰り返しで心身ともに疲れ果てた浅井先生だったが、陸上部顧問として生徒の練習を見ないと、という責任感が。
　鍵とメモを受け取った望月は「大丈夫かねえ？」と職員室を後にした。

　陸上部部室に行く途中、高野先生に会ったが不機嫌そうな顔をしていた。
「有紀ちゃんセンセ、ちーっす！　機嫌悪いみたいだけど何かあったんすか？」
「別になにも」
　こら絶対何かあったな、と話題を変えることに。
「あ、お誕生日おめでとうごさいました」
「１か月前のことだがな、ありがとう」
　少し機嫌が直ったと安心した望月だったが、急に高野先生に抱きつきたい気分に駆られた。
（……うぐぐぐ……女性にはそう簡単に抱きつくもんじゃねぇええええ！）
　抱きつきたいのを必死に堪え、握手に切り替える。
「おめでとうのしぇいくはーんど、しぇいくはーんど！」
　いきなり手を掴まれ、ブンブン握手された高野先生は「何の真似だ？」と訝しげに望月の顔を見ている。
「祝いの気持ちとして、今の握手はありがたく受け取ろう。いきなりされたのは驚いたがな」
　そう言うと、高野先生はバスケットボール部の様子を見に体育館へ。
（……ったく、何だこれ？　今日の俺様、変じゃね？）
　部活の時は気を付けないと青物といき、後木真央、直風満帆といった女子部員を抱きしめかねない。

「今日は、皆くっついてて暑いですにゃー」
　ベタベタするのは好きではないが、猫みたいに可愛いイメージを持たれている青物といきは、陸上部の子のハグは積極的に受ける気だ。
　いきなり他人にハグしないよう慎重に歩いている望月だったが、部室前で、といきに会ったのでハグしたくなったが、抱きつかないように近くに木にタックル。
「ウサちゃんセンパイ、何で木に抱きついとんのん？」
　不思議に思った直風満帆が近づいて声をかけてきたので、満帆に抱きつこうと木から離れる。
（抱きつかねぇぞ！）
　ハグしたい気持ちを必死に抑え込み、偶然、近くを歩いていた熊にタックル。え？　熊？
「あ、ゴメン、士ちゃん」
　熊の正体は邪衣士だった。
「宇佐見先輩、いきなり抱きつかないでください」
　ぬいぐるみ感覚でハグされたり、居眠りした際、保健室に運んでくれた尾鎌蛇那伊とベアハッグ勝負をしたりで士はうんざりしていた。
「体が勝手に動いて……俺様の意思じゃないんだよ」
　神魂の影響だな、と冷静に判断する士は、望月を引き離すと無言で去って行った。
　今日はもう誰にもハグしたくないし、されたくもないと思いながら。

　そう思っていたが、体育館に向かう途中の高野先生を見るなりハグしてしまった。
「邪衣、どういうつもりだ？」
「すみません！　身体が勝手に動いてハグしてしまったんです！」
　ハグするものかと決めた矢先の出来事に、何故こうなると嘆く士だった。