グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●恋心入り混じりハグ

「あー、ここでもやってるか……」
　さっそく練習するか、とグラウンドに来た宇佐見望月はため息をつく。
　陸上部だけでなく、野球部、サッカー部もハグで練習どころではなかった。
　先ほどハグしたい衝動を堪えたことでひどい目に遭ったのに、また遭いそうな気がしてならない気がした望月。
「うにゃー、やめてにゃー」
　陸上部員にハグされている青物といきを見て、また何か起きるのか……と望月は頭が痛くなった。
「といきちゃん、やめてって言ってるけど本気じゃないな。少し休も」

（これはたしかに良い気分だけど、できれば浅井先生とふたりっきりで、ロマンチックにハグしたいにゃー）
　猫みたいなといきはハグし甲斐があるのか、陸上部の女の子達は、争うようにといきをハグしている。
「仲が良いのはいいけど、ちゃんと練習しろよ」
「……って先生、いつの間に私の近くに！？」
「といきちゃん、うちもおるで」
　ハグしていた直風満帆が突っ込むが、恋愛モードなといきには聞こえず。
「今日は、皆のフォームを見る約束だったな。ウォーミングアップ終わったか？」
　というが、ほとんどの部員はしていない。
　今朝ハグをした満帆が近くにいるので、何でハグしたりされるんだと思う浅井先生は、気苦労で回数を数える暇などなかったが気が重くなった。
「え！？　わ、私のフォームチェックを今日、見てくれるって！？　あ、明日でもいいんですよ先生。うにゃー逃げろー！」
「待て、青物、何故逃げる！」
　追いかけてくる浅井先生を見て「にゃー！」と逃げるといき。
（……せ、先生が追いかけてきてる。抱きつかれるにゃー）
　走っている途中、石に躓いて転んでしまった。
「大丈夫か？」
「だ、大丈夫ですってば！」
　起こしてもらう時にハグしてほしいのが本心だが、練習で汗臭いし、汗で化粧が落ちている状態なのでハグは……という気持ちもありツンとした態度に。
　最初はいじり対象だったが、１学期の間にいろいろあり、浅井先生は気になる先生にランクアップ。ちょっと好きに。
　それもあり、といきは素直になれなかったのだ。
　浅井先生が手を差し伸べるので起き上がろうとしたが、転んだ拍子に足を捻ったのか、右足に痛みが。
「あ、足、捻ったかも……」
「立てるか？」
　浅井先生に手を貸してもらい立ち上がったといきは「嬉しいにゃー」と抱きついた。
「ハグしたまま部室まで連れて行ってくれると……う、嬉しいにゃ……」
「このままでか！？」
　恥ずかしいので離れようとしたが、どういうわけか離れない。
「とりあえず、保健室に行って診てもらおう。恥ずかしいが、このままで……」
　仕方ないので、といきをハグしたまま保健室へ。正面から抱きついたままなので、これは満帆の時以上のハプニングだった。
「あさちゃん先生、今日はよぅハグするなあ。よっぽど好きなんやねー」
　しっかと抱きしめられた満帆は、にこやかにその様子を見ていた。

　そろそろ練習するか、と望月が陸上部の皆のところへ行こうとした時。
「もっちゃんセンパイ～！」
　キラキラした目をして駆け寄って来た後木真央にハグされかけた。
「部活の皆が輝いて見えるのだ、ハグハグなのだ～」
「あ、真央ちゃん……」
　真央が好きなのだが、望月はその気持ちが友達としての好意なのか、恋心なのかわかっていない。
（あれ、あれあれ？　……な、何か、体が止まンねぇ……）
　無意識のうちに、無言で背後から真央を抱きしめていた。
（うあー……俺様、何やってんだ？）
　真央が嫌がったらすぐに離れようと思ったが、ハグされた真央は「ハグなのだ～」と喜んでいる。
　ハグしたい衝動に駆られた時から真央のところに行きたかったので、これは絶好のチャンスなのでは、と考えたが、気になる存在なので複雑な心境に。
（うわ、いい匂い……）
　真央に対する気持ちが好意なのか、恋心かを望月が気付くのは、いつになることやら……。

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