グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●呼び出され、騒動に巻き込まれ

　ハグ騒動で校内がほわ～んとしたり、賑やかだったり、巻き込まれた大人がいたりと騒々しかったが、あっという間に放課後に。
　その間、ハグのため授業が中止になったり、呆れた教師が中断したりというクラスもあったので、まともに授業が行われたクラスは少なかった。
　放課後になってもハグしている生徒もいれば、帰宅したり、教室でおしゃべりしたり、部活に向かう生徒も。
　ハグ以外は、いつもと変わらない寝子高の放課後だった。

「あ～憂鬱……寝子高自体には興味はあるけど……あいつの呼び出しで行くってのが憂鬱だわほんと……」
　ここ数ヶ月、声すら聞かずに済んだ嫌いな兄に呼び出され、寝子高に来た瀧原樹は、正門前で大きなため息をついた。
　携帯の番号を教えたつもりはないのだが、面白いことになっていると兄に呼び出されたのだ。
（何が面白いのかは別に興味ないけど……あいつにガツンと一言物申すために来た）
　くらだないことで呼び出したのなら、会ったら文句言ってやる。そんな意気込みも含め、樹は寝子高に来たのだった。
　
　校内を見回ると、至る所で何人かの生徒がほわ～ん♪　とした表情で抱きあっていた。
「変わった学校とは聞いてたけど、何で皆こんなフレンドリーなの？　抱き合っちゃってさ……」
　男同士、女同士でハグしているのもいたので、これはちょっと……と頭が痛くなり、将来、ここに通うことになったら馴染めるだろうか……と不安をおぼえた。
「……まぁどうでもいいけど……」
　気にせず呼び出した張本人を探しながら、練習のつもりであたしもやってみるとか……と考えていた。
「って、何を阿呆ななことを……」
　半ば本気でそう考えてしまったが、これは面白いどころではない……ような気がしてきた。
「……とりあえず電話……」
　兄に電話をかけたが、電源を切っているので繋がらない。
「……あの野郎……待ってるのも不安だから、移動しながら探そう」
　行きそうな場所はどこだ？　と考えながら、校内を探索していると……。
「ハグ～♪」
　いきなり、見ず知らずの女子生徒にハグされた。
「……いきなり何を……」
「離さないわよイケメンさん♪」
「……あたしは女だ……」
　無頓着なファッション、１７０センチの長身、美形外見なのでイケメンと思われているようだ。
「……離れて……」
　強引に女子生徒を引き離すと、これ以上抱きつかれまいとダッシュで逃げる樹だった。
「……こんなところで……ろっこんが発動したら困る……」
「逃げないで～♪」
「……しつこい……て、人数が増えてる……」
　引き離された女子生徒の後ろには、男女問わず、多くの生徒が。皆、ハグしようと樹を追いかけてくる。
（……もうやだ……）

　追いかけるハグ魔と化した生徒達を振り切り、正門前まで逃げ切った樹はヘトヘトに。
「はぁ、もうやだ……不快感を覚えなかった自分も不思議だったけどさ……絶対変だよここ……ろっこんが発動しなくて良かった……」
　自身のろっこんで誰かに火傷をさせていたら、トラウマになっていたかもしれない。
　兄捜しを諦めて帰ろうとした時、メール着信音が。
「あ、メールだ……」
　送信者は、樹を騒動に巻き込んだ張本人だった。
「今日のおやつはレアチーズケーキって、お洒落なアイドルブログ風のメール送ってきてやがる……ていうか、もう帰ってんじゃん、あいつ……」
　これ以上ここにいたら、頭がおかしくなりそうだ。兄がいないので、樹はさっさと帰ることに。

「……もう中学卒業するまでは、絶対、寝子高には近づかない……」
　正門から離れようとしたが、神魂の影響で通りすがりのおばさんにハグしてしまった。
「……なんでこうなるの……」
　おばさんに抱きつきながら、樹は「……もうやだ、早く家に帰りたい……」と涙を流した。