グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●ハグハグのその後

　時間はあっという間に過ぎ、閉門時間1時間前に。
　クラブ活動、部活動をしている生徒達は次々と帰り支度をしている中、ほわ～んとしたままの生徒や、廊下で大の字で寝ている生徒も。
　神魂の影響の効果が薄れてきたのか、ハグしてほわ～んな空気は消え去っていた。

　酔った勢いとはいえ、授業をサボってどんちゃん騒ぎしていた滝原レオンは、目覚めた頃にはすっかり酔いが醒めていた。
「やっちまった……酔っぱらっていたとはいえ、俺はなんてことを……！　明日からどんな顔して学校に来ればいいんだよ…！」
　顔を手で覆い、さめざめと泣いて後悔するレオンの側では、全身真っ赤な奈良橋博美が座り込んでいる。
　一緒にいたはずの尾鎌蛇那伊がいないので、酔いが醒め、どこかに行ってしまったのだろう。
　博美も酔いが醒めたことで我に返り、かなり恥ずかしい思いをしたままハグしたレオンに土下座して謝る。
「酔った勢いとはいえ、抱きついてすまなかった！　許してくれ！」
　倍返し銀行マンドラマ然りの土下座をすれば許してもらえると思い、博美は深々と土下座する。
「いや、俺のほうこそすまなかった。お互い、とんでもない目に遭ったな」
「本当にそうだな」
　謝罪したふたりが見つめ合うのは謝罪から生まれた恋ではなく、神魂の影響がまだ残っているからだろう。
「もっと飲もうぜ～！」
　レオン達を巻き込んだ酒浸朱蘭は、酔ったまま眠っていた。
「朱蘭さん、こんなところで寝ていると風邪ひくぞ？　起きろ」
　博美が揺すって起こすが、まったく起きる気配無し。
「ここで寝かしたままは良くないな。連れて帰ろう」
「俺も手伝うよ」
　ふたりがかりで朱蘭を抱え、校外に連れ出すと猫鳴館に運び込んだ。
　どんちゃん騒ぎで体力を使い果たしていたので、かなりの重労働だった。運ばれた当人は、猫鳴館に着いてもまだ眠っていた。

　明日からどんな顔をして学校に来ればと悩んでいるのは、浅井先生も同じだった。
　直風満帆だけでなく、青物といきにまでハグし、泣きついた南戸河蔵人にハグされてしまったのだから。
　そのことで高野先生の怒りを買い、冷たく、鋭い目で睨まれているのもある。
（そういえば、こんなこともあったな……）
　思い出すのは、昼休みの出来事。
　今度こそ静かに、ゆっくり読書しようと図書室に向かう八神修とすれ違った際、いきなりハグ。
　しかも、その現場を高野先生に見られたという運の悪さ。
「浅井先生……これで何度目のハグだ……？」
　また叱られた、と浅井先生がへこんでいるので、修は助け舟を出すことに。
「アメリカ式挨拶ですよ、高野先生。日本ではアメリカ式挨拶は難しいですか？　挨拶推進運動は良いことだと思うので、俺も違う挨拶に変えるつもりです。高野先生、どう思いますか？」
　修の言葉に、高野先生は「八神と組んで、何か計画してたのか」と納得したようだ。
「そ、そうなんですよ！　なあ、八神！」
「はい」
「それはいいが、人目をはばからずのハグはあまり関心しないな」
　修の機転で誤魔化すことができ、安心した浅井先生は、ハグを解くと力が抜け、その場に座り込んだ。

　レオン、浅井先生以上にひどい目に遭ったのは、花椿涼太郎ではないだろうか。
　寝子高に来たばかりだというのに、恒例ともいえる神魂の影響のせいでトラウマを植え付けられたのだから。
　彼は、オネエが大の苦手になったのは言うまでもない。しばらくオネエにハグされる悪夢を見続けることも。

　ハグの影響は、悪いことだけではなかった。
　哀坂極夜と矢萩咲の距離は、ほんの少しだが縮まり、互いを意識するように。恋愛感情も芽生え始めた。
　柚瀬玲音は遅刻して先生に叱られたが、楽しい体験ができたので、寝子高にまた行くことを決めた。

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