グッドモーニング・ハグハグ☆｜リアクション

グッドモーニング・ハグハグ☆

●危険なバラ色ハプニング

　不審者扱いされので生徒に会いに来たと誤魔化してしまったことを後悔しながら、樹雨蓮太朗は校内に入り込んで職員室を探していた。
　誰かに聞いてみようと辺りを見るが、蓮太朗がいるところには誰もいない。
　廊下の窓から外を見ると、グラウンドで体育の授業が行われていた。
「授業中でしたか。どうりで誰もいないわけです。自力で探してみることにしましょう」

　それからしばらくすると、ハグしたい可愛い猫ちゃん、わんこを求め校内を歩いてる羊飼依津にばったり。
（あの子に抱きつきたい……）
　初対面の男子生徒を一目見るなり、ハグしたい気持ちが芽生えた。
（ハグしたいですけど……あの子は男の子じゃないですか……）
　私は何を考えているんだ……とハグの衝動を堪えようとしたが、蓮太朗は依津の腕を引き寄せ、抱きしめた。
「いきなりだから、びっくりしたよお。見かけない猫ちゃんだねぇ、どこから迷い込んだのかなあ？」
「……猫？　この学校で、猫を飼っているのかい？」
「何を言っているのかなあ、俺の目の前にいるじゃないかあ」
「……え？　ひょっとして、私のことですか！？」
　目を丸くして驚く蓮太朗にお構いなく、依津はニヤリと笑い壁ドンで急接近。
「ハグされたら積極的で甘やかしたくなっちゃうなあ、可愛い猫ちゃん」
　お目当ての猫ちゃん（と決めた人間）を見つけた幸せ、ハグされた嬉しさにニヤリと笑う。
「私は樹雨蓮太朗といいます。猫ちゃんではありません」
「猫ちゃんは猫ちゃんじゃないかあ。この羊飼依津があ、今日からご主人様だよお」
　そのことをわからせてあげると言わんばかりに、依津は蓮太朗を押し倒した。
（駄目だ！）
　警鐘が鳴り響いたので必死で抗うが、無理矢理距離を取ろうとするもハグの本能に抗えず。
　蓮太朗が引き寄せたことで、依津との距離が一層縮まる。
　神魂の影響で離れられなくなった蓮太朗は、ちらりと上目遣いをし、依津の肩に顎を乗せる。
（初対面の子に抱きつくなんて……）
　大胆な行動に困惑するも、大人としての余裕は崩していないので赤面せず。

「人懐っこい猫ちゃんだねえ。たっぷり可愛がってあげるよお」
　誰もいないのをいいことに、依津は蓮太朗の膝を割って片足を滑り込ませ、膝裏を掴んで動きを封じた。
「何を……！？」
　この行為に蓮太朗は更に困惑。
「あはは、困っている猫ちゃんもかわいいねえ？　もっと困らせてみたいなあ」
「す、すまない……どうも調子がおかしいみたいだ。こんなことは社会人としてあるまじき行為だし、羊飼君でなかったら、訴えられていたかもしれない」
「別にやましいこととは思ってないよお。だってえ、飼い主が猫ちゃん相手に変なこと考えるわけないしい」
　考えているじゃないか！　と反論したかったが、口にすることはできなかった。
（年下の男の子にこんなことされてドキドキするなんて……）
　今日の私はどうかしていると考えるが、理性が吹っ飛びそうな感覚に。
「ほんとにかわいいねえ、この猫ちゃんはあ。気に入っちゃったあ～。どの首輪が似合うかなあ……」
　この後のことをあれこれ考えている蓮太朗に、依津は金色の鈴がついた赤い首輪をつけた。
「首輪付けちゃった、似合ってるよ～」
「え……？」
　そう言われ、知らない間に首輪を付けられたことに気付いて外そうとするが、馬乗りされた状態では外せず。
「抱きついて、壁ドン、股ドンからの押し倒し公開プレイですか？　私は羊飼君の恋人か愛人ですか？」
「初対面だよお。猫ちゃんが離れたくないならぁ、このまま俺が飼ってあげるねえ」
　ハグしつつ蓮太朗の顎に手をかけ、猫にするようにくすぐってどう可愛がろうか企む、もとい、考える依津。

　ふたりの周囲には、大輪の赤いバラが咲き誇っているように見えるアダルティな雰囲気が漂っていた。