怪人セブンの断罪｜リアクション

怪人セブンの断罪

【木曜日：早朝　レター】

　芹沢梨樹はこの日、妙に早く目が冴えてしまった。
　まだ登校予定時間まで２時間強もある。
「でも、二度寝するには勿体無いくらいの快晴だな」
　雲ひとつない朝の空を見ると、なんだか心が洗われる気分だ。
　羽織るもの１枚引っ掛けて、芹沢は自宅の周辺を散歩することにした。
　もう季節は五月初頭。それでも朝はまだ肌寒い。だが、却ってこの冷たさが頭を冴え渡らせる。
「この感覚、新鮮だ。早起きしてみるもんだ」
　徐々に日が高くなると、空が赤から青へ変化してく。この光景も早起きしないと見られない貴重なものだ。
「早起きは三文の得、か」
「三文どころか、プライスレスさね！」
「うぉっ！？　誰だ！？」
　唐突に聞こえてきた人の声に飛び上がってしまう芹沢。
　そのリアクションに腹を抱えて笑うは、神出鬼没だった。
「驚き過ぎさね！」
「いや、驚くだろフツウ……！」
　芹沢は胸を撫で下ろすと、名前のとおり神出鬼没なチビッ子に目線を合わすべく身を屈めた。
「神出鬼は今日も郵便局のバイトか。早くからご苦労様だ」
「うん！　芹沢もこんな時間にいるのは珍しいね！　思わず声掛けたくなったさぁ！」
　いいリアクションだったさね、と付け加えつつ、神出鬼は思い出したかのように芹沢へ尋ねた。
「せぶんーじゃなくて。危ない人とか変わった事知らないー？」
「ん、神出鬼も偽セブンのことを調べてるのか？」
「オイラだけじゃないよ！　天野もアネモネも。爆弾のこともあるし、みんな怪我してほしくないさね」
　そう言うと、神出鬼は「通り掛かったから渡すね」と芹沢に配達物を差し出し、立ち去ろうとする。
　その背に向かって、芹沢は早口で呼び止めた。
「俺は桜庭や小山内や、他の仲間と調べている。昼休み、ミステリ研へ来てくれれば情報交換できるはずだ」
「分かったよ！　芹沢も仲間なら嬉しいさぁ！」
　神出鬼はそのまま元気よく朝の旧市街を駆け回っていく。
　そして、行く先々で情報収集に情報収集に努めるのであった。