学校サボってどこいこう｜リアクション

学校サボってどこいこう

【四限目（１）】

　新江天懸は困っていた。
　彼は自称寝子島一のナンパ師だった。
　ゆえに、この日、突然思い立ったサボりで持て余した時間を潰すために彼がナンパをしようとするのも自明であったのだが。
「真昼間から制服姿でナンパなんざ成功するわきゃねぇよな……」
　不良中学生の彼にもそれくらいのことはわかっていた。
（さて、どうしたもんか……）
　と、街をぶらぶらしていると、天懸の耳に彼と同年代の少女達の華やかなかけ声が聞こえてきた。
「ここは……」
　思わずそちらを振り向き、天懸は言葉を失った。
　そこは寝子島高校。彼にとって、複雑な感情にとらわれずにはいられない場所であった。
（……あいつも通っているのか、この学校に）
　右耳の傷痕がずきりと痛む。
　天懸には姉がいる。
　彼は幼い頃、その姉から徹底して無視をされ続けた過去があった。
　右耳の傷痕はその姉にピアスを引きちぎられて出来た傷痕だった。
　天懸はそんな過去の姉との記憶が原因で、女性全般に対して無意識に恐怖を抱いていた。
　彼がやたらと女を口説きたがるのはそんな無意識の恐怖を克服しようという無意識の行動だった。
「…………」
　グラウンドでは、体育の授業か、女子生徒達がソフトボールの試合を行っている。
「あー、俺も中学を出たらここにいかなきゃいけねぇのかな……」
　呟いた言葉には複雑な感情が滲み出ていた。
「……行くか」
　ぽつり呟くと、天懸はまたあてもなく目の前の道を歩き始めた。