学校サボってどこいこう｜リアクション

学校サボってどこいこう

【休憩時間（３）】

　朝鳥さゆるは寝子島スポーツセンターの屋内プールにやってきていた。
　もちろん水着など用意しているわけもなく、センター内のショップで買ったシンプルな競泳水着に身を包み、久しぶりの水泳に念入りな準備運動を行っている。
（泳ぐのなんて久しぶりね……）
　プロポーションのとれた身体つきで柔軟運動をしていると、否応なしに若い男達の熱い視線を引き寄せてしまう。
　そんな視線には慣れっこだと言わんばかりに、さゆるは黙々と準備運動を済ませ、そのままプールの水に身体を浸した。
「ふぅっ」
　水に身体を包みこまれる感触を味わうように、さゆるは小さく吐息する。
　ただ息を吐いただけなのに、その仕草や表情は妙に色っぽく、またそれらがまわりの男達の視線を惹きつけた。
　しかし、さゆるはそんなものは歯牙にもかけず、流れるような動作で水の中を泳ぎ始める。
　速さを競いに来ているわけではなかった。
　さゆるはただ一心不乱に身体を動かし続けることで頭の中から余計な物事を追い出したいだけだった。
　今の彼女にはそのような時間が必要だった。
　どれだけ大人びて見えたところで、彼女はまだ高校生なのだ。
　平泳ぎ、背泳ぎ、クロール、バタフライ。
　一通りの基本的な泳法をマイペースに無我の境地でこなしていく。
　さゆるはその日、自らの迷いともつかぬ曖昧な心のわだかまりを吐き出すために、体力の続く限り、一心不乱に身体を動かし続けた。