悠久の時の彼方へ～決戦！桶狭間｜リアクション

悠久の時の彼方へ～決戦！桶狭間

「戦国時代にタイムスリップとは……すごいことをする神魂があるんですね。しかも、歴史が変わりそうなんて……」
　先ほど、築地哲から一通り事情を教えてもらったアーサー・Ｔ・シートンは、困惑を隠しきれない様子で言った。シートンの仕事は動物園の職員、戦えと言われても無理な相談だ。
「ほんと、同感よ。事情は分かったけど、フライパンでどーしろと！？」
　傍らには、同じく現代から飛ばされた維剣姫乃もいる。フライパンで今川焼きを作っていたところを時間移動してしまったのだ。
「でも、歴史が変わるのはさすがに止めたほうがいいですよね……」
「そうだね……。シートンさんはどうする？」
　出来上がった今川焼きをひとまず食べながら、姫乃は問いかける。
「今川軍が仕掛けた罠を探すくらいなら、私にもできるでしょう。あなたは？」
「私は……ひとまず、一番士気の低い部隊なら安全そうだから、そこに紛れ込んで様子みてみるわ。あと、よかったら半分どうぞ」
「ありがとうございます。無事を、祈りますよ」
　シートンは今川焼きの半分を受け取り、姫乃と一旦別れた。

「また神魂の影響、か……」
　御剣刀は、何処ともなく去っていった哲を見送りながら呟いた。横には、偶然戦国時代で出会ってしまった朝野未沙が立っている。
「今回のはほっとくと歴史が変わる、か。消えるのはごめんだから、なんとしても歴史を元通りにしないと。剣術の腕試しにもちょうどいい。なあ、朝野」
　声をかけられた未沙だったが、彼女の考えていることは違ったようだ。
「ねぇ刀くん、信長って成果主義だったのよね……」
「……？どういうことだ？」
「有益な情報を持ってきた間者に褒美を与えたという信長様なら、活躍すればご褒美もらえるよね！」
「いや、それはわからないぞ。俺たちは織田の家臣ですらないし」
「戦国時代って、権力者は美女を何人も抱えてたのよね……ご褒美に戦国の美少女をもらってキャッキャウフフ！高貴でしとやかな貴族の姫、勝気な武家の姫、純朴な平民出身の姫……いろんなお姫様とあんなことやこんなことも！ハーレム完成！」
「……。俺は、雑兵の中に紛れてくるからな」
　一人で盛り上がり始めた未沙を尻目に、刀は歩き出す。
　これは夢ではなく、現実だ―――
　刀は、哲に言われた言葉を反芻した。つまり、相手を傷つけたり殺したりしたら……そういうこと、だ。覚悟は出来ている。俺が修行しているのは「剣道」ではなく「剣術」だ。「剣術」とは、相手を殺すための技である。ここでためらいを見せてどうするのか。

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