悠久の時の彼方へ～決戦！桶狭間｜リアクション

悠久の時の彼方へ～決戦！桶狭間

「頼りはお爺ちゃんから仕込まれた剣術だけだけど……強くなった義元に通じるかな？」
　維剣姫乃は、敵陣の中心の様子をうかがう。助平な配下に護衛されながら本陣に突入したものの、妖刀で強化されたという義元と一戦を交えるのに躊躇していたのだった。
「大将、さっきの力はどうしたべ！」
「そうそう、さっき服脱がした時の……」
　配下の足軽たちが姫乃に向かって言い立てる。先ほどの顛末を思い出した姫乃の顔が、みるみる紅潮していく。
「ちょっと、変なこと思い出させないで！」
　ろっこん「羞恥心バースト」は再び発動した。瞬く間に蹴散らされる今川軍の兵卒たち。
「大将、恥ずかしがらせると強くなるみたいだべ」
「痴女かなんかかの？」
「しかし、けしからん乳しとるべ」
　戦闘中も勝手なことを言い出す助平な手下に、姫乃は怒鳴る。
「好き放題言わないでよ、恥ずかしいから！」
　あいつら後でぶん殴る―――心に誓う姫乃だった。

　それでも、戦闘能力を増した姫乃の一隊は、着実に敵兵の攻撃を突破していった。
「くっ……このわしを容易くいなすとは……。お主の名を聞かせてくれ」
　負傷して倒れた将兵が、姫乃に問いかける。身分の高そうな身なりをしており、武勇にも覚えがありそうな武士だ。
「私？ ―――武田信玄よ。覚えておきなさい」
「武田……信玄？」
　敵将のみならず、見方までもが驚いた。
「あの信玄が？」
「女？しかもこんなに若い娘？」
「でも、頼もしい味方だべ！」
　配下たちの士気は俄然上がった。
「さあ、義元を倒すわよ！」
　姫乃は軍配がわりのフライパンを振り上げ、突撃の速度を早める。
　織田方の兵をなぎ倒し続ける義元の姿を目視すると、姫乃たちは敢然と立ち向かった。
「ええい！」
　意外な武器なら、妖刀を弾き飛ばせるかも知れない。一点の可能性にかけ、フライパンを叩きつけるが―――
「効かぬわ！」
　義元の大喝とともに、フライパンは、姫乃の手を離れ、虚しく宙を舞った。
「大将！」
　姫乃を心配する配下たちに、姫乃は腰の日本刀を抜いて鼓舞した。
「心配ないわ！あんたたちも、死んじゃダメよ！後でぶん殴れないから！」