悠久の時の彼方へ～決戦！桶狭間｜リアクション

悠久の時の彼方へ～決戦！桶狭間

　深い森の中、鳥のように木から木へ飛び移る影があった。ろっこん「トンビの飛翔」を使った奈良橋博美だった。
「オレはトンビの飛翔があるから罠をよけられるけど、織田軍の兵卒たちにすべて回避させるなんてほぼ無理だ。そう考えると、織田軍の進路の反対側で騒動を起こして、敵の気を引くのが一番だろう」
　博美は、下にいる人影に呼びかけた。
「修くんは、君のアイデア通り犬を放って！」
「オーケー！」
　八神修は、数頭の犬をあさっての方向に放つ。持っていたシシカバブと、動物になつかれやすい体質を利用して、敵方の犬を味方につけたのだった。これで、今川の軍用犬は役には立たない。ただし、一頭だけは後で利用するために手元に残しておく。
　それから、縄と油を使った簡易ののろしも各所につけておく。出来る限りのかく乱工作だ。
「沼田さんは、オレが罠の場所を教えるから、わざと思いっきり鳴らして！」
「は、はい……」
　さっき織田軍に先行して罠にかかりまくっていた沼田さんは、博美に助け出され、こちらの手伝いに駆り出されたのだった。
「なるほど、沼田さんの使い方には、こういうのもあるのか……」
　変に感心する沼田さんの召喚者、屑利執だった。
「さて、オレもかく乱するぞ！」
　博美は、空を飛びながら、石ころを投げて癇癪玉や鳴子を鳴らしていく。これだけ広範囲に音が鳴れば、敵の間者も混乱するだろう。博美自身は、高い木の枝から枝に飛び移りながら移動しているので、危険も少ない。
「あ、沼田さん、危ないからよけて！」
「えっ……。しまった、動けません！」
　博美が石を投げ落とした真下に、折悪しく沼田さんがいた。よけられるタイミングだったが、運悪く鳴子の糸に足が絡まってしまい、動けなくなってしまったのだ。
「痛あっ！」
　沼田さんは、どこまでも不運だった。