スイート・タイフーンにご注意を？｜リアクション

スイート・タイフーンにご注意を？

「これで、どうだ！」
　それはさておき、刀が美弥子から借りたロープを手に、雲へ飛びついた。そして雲の一部に括りつけ、落下に任せ引き寄せる！　すると、雲の動きも鈍くなり、跳ねなくても届く位置へと降りて来た。けれども、気を許せば刀自身が空へ跳ね上げられそうだ。
「くっ、結構キツいけど……ん？」
「うわぁ……！」
　刀が力を込めて踏ん張っていると、海美と玲音の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。どうやらまだ雲の上で発掘作業（？）をしているようだ。
「おひさまがきれい♪　すっごくきもちいいなぁ♪」
「ふっかふかのわたがしも、おかしもおいしいね～」
　そうこうしているうちにぽふっ、と柔らかい音をたてて落ちてくる２人を時子とアリサで着地のフォロー。すっごく楽しそうな海美は「もういっかい！」と元気にジャンプ！　玲音も「もっとたべたいなー、なー」と思いっきりジャンプ！
「ふふっ、楽しそうですね……。美弥子さん、もうちょっとそこに待機してください……。風の流れ次第でもう１回お願いするかもしれません！」
　時子の声に、美弥子もまた肯く。ドコからとも無く出てきたティッシュで鼻を拭きつつも、様子を伺っていた。

　その様子を伺いながらビルを渡る影あり。色々と情報を提供してくれた１人、志波拓郎である。
（水も……有効な筈だ！）
　拓郎は駅ビルに隣接するビルの屋上からろっこん『テイクオフジャンパー』を使って飛び移りつつ濡らした上着を振り回し、雲にアタック！　一部がごそっ、と削れて落ちていく。途端に何故か、幾つもの小さなビニールパックに入れられた綿菓子へと変化していった。
「これも……美味そう、だな」
　着地と共にゲットし、僅かに顔を綻ばせる。見事な着地（ろっこんの効果でダメージはほぼ０）に彩葉や璃亜、勘三郎は思わず拍手し、照れる拓郎。
「そんなら、俺も本気出すか！」
　水をある程度飲んだ勘三郎が、声高くカラスの鳴き真似をする。あっというまにハシブトガラスになった彼は強風の中綿菓子雲へと接近！　器用に嘴でちょっと固めてむしゃむしゃと食べ始めた。いや、鳥になった今は啄むという表現のほうが合っているか？
（確かに、これを只管食べ続けるのはキツイぜ！　でも、根性で食べてやる！！）
　勘三郎は只管食べた。只管固めて啄んでいき、そんな中で「こんな自分もちょっとかっこいい？」なんて思ってしまう。
　その間に、雲を引き寄せていた刀をそつなく手伝う源一。その傍らでは引き寄せられた綿菓子を千切り、おいしそうに食べる時子と必死になる璃亜の姿があった。時子は上品な笑みで口にし、どことなく余裕の表情だ。
（うぅ、この雲をどうにかしないと帰れないんですよね。がんばるしかありません！）
　璃亜は食べきれるだけ食べようと、少しずつちぎりながら食べる。源一はそんな２人にもそれとなくお茶を差し出した。
「もう一度……やるか」
　拓郎もまた再び跳ね上がり、濡らした上着で綿菓子を綺麗に切断！　再びばらばらと、個別包装された綿菓子が落ちてくる。そして、ろっこんの力を使って雲にそって長い距離を飛び、霧吹きでも攻撃してみる。その傍らに他のお菓子も落ちるのは怜とあみぐるみの攻撃の結果だった。
「しかし、いつまで続ければいいんだ……」
「まだ、終わりじゃなさそうだ」
　額に浮かんだ汗を拭って怜が呟く。前もって書いていた絵が無くなった月詠が、手早くスケッチブックに絵を描き、綿菓子を吸い込む事に集中した。

「切り札は、最後まで取っておくべき、だろ？」
「修ちゃん、ちょっと悪役ちっくなお顔なのだ」
「キメ台詞にはいいね」
　そんな事を言っているのは八神修と後木真央、南戸河蔵人である。３人が駅ビルへ到着した時、偶然にもジェレミア・ベルトーニと神野マキナ、夜乃理沙と遭遇する。
「何か、策がありそうだね」
　ジェレミアがそう修へ言えば、彼は「ええ」と笑顔で肯く。早く行こう、とマキナが一同へと笑いかけると、残りのメンバーもまた力強い笑顔を見せた。
　エレベーターで屋上に上がると、既に多くの面々が雲に挑んでいた。攻撃する度に雲から菓子が落ち、跳ねれば雲へと手が届く。雲は既に四分の三は削れているように見えた。
「飛び跳ねなくても、食べられるかもしれないね」
　そう、マキナが言った先には雲に括りつけたロープを引っ張って流れないようにする刀と源一の姿が。そこに立ち寄ってマキナは綿菓子をつまみ、ぱくっ、と口にした。ジェレミアと蔵人、理沙も試食してみる。

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