うみねこ１日店員求む｜リアクション

うみねこ１日店員求む

●楽しい気持ちと複雑な心境

　ウミネコを見つけたテーブルがラッキープレイスと知ったあおいは、いいことがあるかもとワクワクした。
「私は、魚介ばくだん丼とかき揚げを単品で」
「俺は海鮮かき揚げ丼だ。あおいは？」
「うーん……私はうみねこシーフードカレーにするね」
「これ、お弁当の参考になりそうなメニューじゃないか？」
　注文を決めたあおいに、修はメニューに載っている生姜焼きの写真を見せた。
「いろいろ注文して、取り皿を貰ってシェアしよう。少しずつ楽しめると思わないか？」
　楽しそう、と修の提案に賛成する綾花とあおい。

「注文お願いします」
　はーい、ただいまー！　と元気良く厨房から注文を聞きに来たのは、調理担当の神楽坂澪。
「可愛いおねーさん達、ご注文をどうぞ」
　調理はどうした！　というツッコミはしないでほしい。
　海鮮かき揚げの注文、一口かき揚げの売れ行きが予想以上に多いので出せなくなりそうなピンチに陥った。
　それを回避すべく、黒滝竜也と李小麗は、大急ぎで材料を買いに行った。
　総悟は皿洗いをしているので、天満七星と鴇波羽衣だけでは接客が追いつかない。
　そこで、澪がピンチヒッターを買って出た。
「魚介ばくだん丼と海鮮かき揚げ単品、海鮮かき揚げ丼、うみねこシーフードカレー」
　彼女達が注文する前に、修が注文する。
「彼氏さんに悪かったかな？」
　修が不機嫌そうなのを察知したのか、澪がそう言う。
（彼氏じゃ……）
　複雑な気持ちを紛らわすかのように、修は、ねこったーで集まった店員達が寝子高生ばかりなのが気になり、七星を呼び止め理由を訊ねた。
「それは偶然ですわ。ご主人と奥様がお休みですので、私達が代わりに切り盛りしていますの」
　魚戸夫妻は７月中旬から無休で営業し、総悟に休みを勧められたことも聞いた。
「悪いな、手伝えなくて」
「気になさらないでください。ごゆっくりどうぞ」

　注文を待つ間、修は改装手伝いをした時の話を。
「ここの改装、俺と綾辻も手伝ったんだ。店内がバリアフリーなのはその結果さ」
　繁盛していて良かった……と喜ぶ修を見て、自分のことのように嬉しくなるあおいだった。
　いろいろ話し込んでいるうちに、注文した料理が運ばれてきた。
「お待ちどうさま。たくさん食べてね！」
　羽衣と七星が、できたてのメニューを運んできた。
　朝食を減らし、お昼にたくさん食べる気で来た綾花は久しぶりのうみねこメニューに目を輝かせる。

「居酒屋っぽいな」
「居酒屋方式にしようって言ったのは修君でしょ？」
　顔を合わせ、クスリと笑いあう修とあおい。
「ひとりで食べるより、こうして食べるご飯は美味しいですね」
　うみねこ改装時に、手伝った皆と一緒に食べた賄いの味を思い出す綾花。
　
　３人で分け合ったので、皿に盛られた料理はパセリ以外、ひとつも残っていなかった。
「総悟くん、接客が板についてきましたね。また一緒にバイトした時には、いろいろ教えてもらいたいです」
　会計を済ませ、うみねこを出る前に綾花は総悟に話しかける。
「僕だって、まだまだハルコさんにいろいろ教わっている身だよ。綾辻さん、八神君、また一緒に手伝いができるといいね」
「ああ。機会があれば、な」

　３人が出ようとした時、一口海鮮かき揚げを買いに来た女性客が来た。
　かき揚げの売り上げが気になっていた綾花は、買っていく客がいて嬉しくなった。
「私も一口かき揚げ買ってきます。待っててください」
　一旦うみねこを出た綾花だったが、買っていった客を見て自分も買いたくなった。