うみねこ１日店員求む｜リアクション

うみねこ１日店員求む

●いらっしゃいませ

　一口海鮮かき揚げを作り終えると、テイクアウト用のかき揚げを作る調理班。
　完成したものは紙コップに詰めれるだけ詰め、爪楊枝を刺してホットケースにしまう。
「お持ち帰りの時はプラスチックのフタをして、袋に入れて持たせるんだね」
　ホットケースの側に置いてあるお持ち帰り用の容器を確認する神楽坂澪。
「お店の掃除、終わったよ！　そっちは？」
　厨房の様子を見に来た鴇波羽衣が、そろそろ開店時間だと告げる。
「いつでもＯＫだぜ！」
　親指を立て、満面の笑みで答える望月。
「お店も、厨房も準備ができましたね。開店しましょう。皆さん、頑張りましょう」
　総悟の言葉に、寝子高生達は「おー！」と手を挙げ、開店前に気合いを入れる。　

　開店時間になると、長距離トラックドライバーといった馴染み客がやって来た。
「いらっしゃいませ、何名様ですか？」
　町娘風な服にフリルのついたエプロン姿の天満七星は、笑顔で、かつ丁寧に接客。
「俺ひとりだ。今日のお勧めは何だい？」
　常連のトラックドライバーのおじさんが訊ねる。
「本日は、海鮮かき揚げがお勧めですわ。大きいのと、小さいのとがあります」
「大きいのと小さいの？」
「大きいのは、このお店名物の海鮮かき揚げのことで、小さいのは、新メニューのお持ち帰りができる一口かき揚げですわ」
　かき揚げの解説を入れながら、注文を聞く。
　壁のお品書きを見たトラックドライバーは「海鮮かき揚げ丼くれ」と注文を。
「その恰好、コスプレかい？」
「いいえ、私なりの動きやすい服装ですわ」
　注文をしっかり伝票に書きつつ、七星は、時折、雑談に応じる。
（しっかり書いておきませんと、作る方々が何を作ればいいかわかりませんし）

「３番テーブル、海鮮かき揚げ丼大盛りお願いします」
　さー作るぜ！　と張り切る宇佐見望月を中心に、調理担当者は次々とメニューを作る。
「お座敷イルカテーブル、豚の生姜焼き温泉卵乗せと海鮮生春巻きなのだ！」
　注文を伝達し終えた李小麗は、他の客に水を持っていったりと身軽さを活かし動き回る。

　１２時を過ぎた頃、海鮮かき揚げの評判を聞いて立ち寄ったという芽森菜々緒が来た。
「菜々緒、久しぶりなのだ♪」
　菜々緒に気付き、真っ先に駆け付けた小麗が出迎える。
「久しぶりね、小麗ちゃん」
「お腹すいてるのか？　菜々緒は、どういうのが好きなのだ？」
　オペラハウスでの怪人セブンの一件でオリジナル人格が消失したが、今ここにいる菜々緒も、統合人格の女王も大切にしたいと普段どおり明るく話しかける。
「好き嫌いはないわ」
「だったら、海鮮かき揚げ丼がオススメなのだ！」
　席に案内しながら「すっごく美味しいのだ！」と満面の笑みで勧める。
　美味しそうに食べている客を見て、評判は本当だと菜々緒は確信した。

「しゃおりーが持っていくのだ！」
　できたてのかき揚げは、小麗が菜々緒に持っていった。
「お待たせなのだ！　後で感想を聞かせてほしいのだ」
「わかったわ」
　菜々緒が食べた海鮮かき揚げは、作り手の気持ち、温かさを感じる優しい味が。
　会計を済ませた菜々緒は「客を思う気持ちが伝わるかき揚げ、美味しかったわ」と一言。
　自宅でゆっくり食べたいと、一口海鮮かき揚げをテイクアウトした菜々緒に小麗は大喜びだった。