うみねこ１日店員求む｜リアクション

うみねこ１日店員求む

●混雑時は大忙し

「元気さと笑顔が大事だよね！」
　いらっしゃいませ！　とハキハキ大きな声で挨拶する鴇波羽衣。
　素早い李小麗、丁寧な天満七星、手伝いに慣れている総悟も手伝っているが、混雑時はすごく忙しい。
　総悟から客の捌き方を開店に聞いた羽衣だったが、いざ実践となると人頼りになり、指示に従って乗り切っている。
　それでも笑顔を崩さず、客の呼びかけに反応し、待たせることがないように動く。
「お待たせしました、ご注文をどうぞ」

　忙しいのは、調理担当者もだ。
　スタンダートなメニューと言いつつ、メモを見て調理する神楽坂澪は、その合間に接客の様子を窺う。
「いいなぁ……僕もおねーさんとキャッキャウフフ、じゃなくて、接客したいな」
「キャッキャウフフじゃなくて、せっせと料理だぜ」
　ため息と一緒に言ってしまったので思考がバレたので、誰よりも大忙しの宇佐見望月に突っ込まれた。
「わ、わかってるさ！　そう思っただけだよ！」
　誤魔化すが、本音はおねーさんと……な澪だった。
「きゃっ！」
　作り終えた定食を盛り付けようとした塔ヶ崎璃亜だったが、厨房内で転倒し、皿を割ってしまった。
　破片を急いで片づけようとするが、足りない分の食材を持ってきた黒滝竜也が駆け付け、代わりに片付けてくれた。
「指を怪我すると料理に支障をきたす。俺がここを片づけるから、早く代わりの皿を持っきて盛り付けるんだ」
「すみません……竜也さん」
　代わりの皿は、食器棚の近くにたまたまいた澪が持ってきてくれた。
「この皿でいいのかな？　僕も手伝うから、早く盛り付けて、接客を手伝っている人に持って行ってもらおう」
「ありがとうございます」
　澪の協力もあり、定食は無事、注文した客のところへ届けられた。

　忙しい時間帯にうみねこに来たのは、七夜あおいを誘った綾辻綾花と八神修の３人。
「これは何だ？」
　修の視線の先には、開き戸に貼ってある『一口かき揚げはじめました』の張り紙が。
「冷やし中華はじめました、みたいだね」
　苦笑するあおいに、一口かき揚げを提案者である綾花は少し複雑な気分に。
「いらっしゃいませ」
　３人が入って来たのに気付いた総悟は、テーブルを拭きながら挨拶。
「こんにちは、総悟くん。お手伝い、頑張っていますね。紹介します。私の親友の七夜あおいちゃんです」
「寝子高１年の七夜あおいよ」
　笑顔で挨拶するあおいに「同じく寝子高１年の鳴鏡院総悟だよ、こちらこそよろしく」と自己紹介。
「ここ、どうぞ。メニューが決まったら、僕か、誰かに注文してね」
　総悟は後片付けを済ませると、厨房に食器を持っていった。

　あおいと楽しい時間が過ごせたら嬉しいと思うが、向かい合って座るのは……と躊躇し、あおいの隣に座る。
「海鮮かき揚げにするか、海鮮かき揚げ丼にするか迷うな。単品で生春巻きも頼もうか。あおいはどうする？」
「何にしようか迷っちゃうな。お勧めは何？」
　メニューを見てワイワイ選び合っている修に対し、綾花は、あおいに何を勧めようか悩んでいる。
「ここの壁やお品書き、綾花ちゃんが言ってたとおりだね。水族館みたい」
「あおいらしいな。何にするか決めたか？」
　メニューを見ようと俯いた時、あおいは、テーブルに描いてあるウミネコを見つけた。
「修君、綾花ちゃん、これ」
　あおいが指をさしたところにウミネコの絵が。
「運が良いな。ウミネコの絵が描いてある席はラッキープレイスなんだ」