うみねこ１日店員求む｜リアクション

うみねこ１日店員求む

●楽しく食事を

　夕方は、昼以上に忙しい。
「豚丼に海鮮丼と春巻き、できたぜ！　税込み１５１０円でレジ打っとくか、注文票に書いといて！」
　調理をしながら接客する面々に、できた料理とレジ打ち等を指示する宇佐見望月。
「望月さん、すごいです」
　感心する塔ヶ崎璃亜は、お店の手伝いで慣れているのかと訊ねた。
「……あー、手伝わされているうちに……な」

　御巫時子は、海原茂と友人の串田美弥子を連れてうみねこへ。
　２人に、ここのかき揚げを薦めたくて誘ったのだ。
　七夕ゆかた祭りで食べた屋台のかき揚げが美味しかったので、時子は、散歩の途中に時々寄って食べている。
「ここが新聞部発行の号外で紹介された大衆食堂か」
「海原先輩、御巫さん、早く入ろうよ」
　店の前で興味深そうに出入りする客達を見る茂に対し、美弥子は早くかき揚げが食べたい、といった表情に。
　開き戸を開けると「いらっしゃいませー！」と元気の良い挨拶が。
「羽衣さん……お店のお手伝いですか……？」
　挨拶した鴇波羽衣に、時子は、どうして手伝っているのか訊ねた。
「ここのおじさんとおばさんがお休みだから、代わりに、あたし達がお店を切り盛りしてるの！」
「そうでしたか……頑張ってくださいね……」
　寝子高生がバイトをしていると知った時子は、厨房で調理している人達は、暑い中、揚げ物を作っているので大変そうと心配する。
「お座敷の席がひとつ開いたから、そこ座って。奥のカメさんテーブルね！」
「席までご案内致しますわ。こちらへ」
　天満七星が３人を案内する。

（壁に魚の絵か。海に面する島らしくていいな）
　茂は店内を一通り見渡した後、メニューをじっくり見る。
　料理の写真や値段だけでなく、魚戸夫妻の似顔絵、オススメメニューも書いてある。
　寝子高生のセンスに感心しながら、茂は何を頼むか考える。
「私は……海鮮かき揚げ丼を……。サクサクふわふわで……海鮮と野菜のバランスが良いです……」
　油っこいものが苦手な人も食べやすいというのは、実際に食べた時子の意見だ。
「おふたりは……好きな食べ物……苦手な食べ物はありますか……？」
　時子は特にないが、茂は甘いものが苦手だ。美弥子はどうだろう？
「メニューに苦手なものは特にない。俺は豚の生姜焼き温泉卵乗せを」
「私も特にないよ。何にしようかな？」
　茂は即決だったが、美弥子は迷っている。
「俺が頼むものは、海鮮かき揚げ同様、うちの生徒が考えたメニューだ」
　号外を隅々まで読んだので、生徒が関わったことはすべて把握。さすが寝子高生徒会長。
「私は魚介ばくだん丼！」
　決まったので、総悟を呼んで注文を。
「豚の生姜焼き温泉卵乗せ、海鮮かき揚げ丼、魚介ばくだん丼ですね。少々お待ちください」

　その様子を厨房から見ていた神楽坂澪は「生徒会長が来るなんて意外だね」と少し驚く。
「生徒会長が来てる！？　だったら、腕によりをかけねえと！」
　何を言われるかわからない不安はあるが、ケンゾウに任されたからには作る！　と意気込む望月。
「私も、頑張って魚介ばくだん丼を作ります」
　璃亜もそれを知り、ケンゾウの味を再現しようとする。

「豚の生姜焼き、お待たせなのだ！」
「海鮮かき揚げ丼に魚介ばくだん丼、お待たせ致しました。」
　李小麗と七星が運んできた料理を受け取ると、各々のものを食べ始めた。
　別メニューだったので、互いの料理を交換したり。
「これが屋台に出していたかき揚げか。御巫が言うように脂っこくないな」
「美味しい！」
「魚介ばくだん丼も……美味しいです……」

このページにイラストを設定する