うみねこ１日店員求む｜リアクション

うみねこ１日店員求む

●開店準備

「天満さん、ちょっと」
　手伝いに相応しい服に着替えに行こうとする天満七星は、総悟に呼び止められた。
「ケンゾウさんが、きみが来たらお品書きを書いてほしいって」
　来ていなかったらどうしようと思ったが、来てくれたので安心した。
「屋台の一口海鮮かき揚げ食べたいって要望が多かったから、今日からお店で出すことにしたんだ」
「そうでしたの。これからは、お店でも一口かき揚げが食べられますのね。喜んでお引き受け致します」
　流木を模した引っ掛け板に、七星は心をこめてメニューを書く。

　厨房では、宇佐見望月が食材チェック。
「オッチャン、市場で仕入れるのかな？」
「市場や漁港に仕入れに行くと聞きました。今日の分は、ケンゾウさんが調達してくれました」
　総悟からそう聞き、せっかくの休みなのに早起きして食材を調達してくれたケンゾウに感謝する望月。
「俺らのために、オッチャンが今日の分を用意してくれたんだ。明日は、部活がある日と同じように早起きして仕入れに行かなきゃな……」
「僕もお手伝いします」

「生春巻き、かき揚げ、カレーに生姜焼き……スタンダードなものばっかだね」
　調理すると言ったからにはケンゾウの味を再現すべき。そう思った神楽坂澪は、メモを隅々まで見ている。
「澪ちゃん、頑張ってメシ作ろうぜ！」
「言われなくても、そのつもりだよ」
　おねーさん達に喜んでもらいたいし、というのは内緒。
「お客さんのためにも、馴染みの味を再現しないと、ですね」
　任されたからには、責任持って調理しようと塔ヶ崎璃亜もメモに目を通す。
「食材や調理器具の場所、わかりましたか？　僕は掃除を手伝いに行きます」
「教えてくれてありがとうな、総悟ちゃん」
　調理の前に手洗い、と、手を洗いながら望月は礼を言う。

　店内の掃除は、黒滝竜也と鴇波羽衣が協力して行っている。
　竜也がテーブルと椅子を移動させ、空いた場所を羽衣が箒で掃いてからモップがけを。
「気持ち良く食事してもらいたいから、お店を綺麗にしないとね！」
「鴇波、そっちが終わったらお座敷のほうを頼む」
「わかった！」
　床掃除が終わり、テーブルを元の位置に戻した羽衣は、端に何か描いてあるのに気付いた。
「ウミネコ？」
「ウミネコ見つけたんだ、鴇波さん。いいことがあるかもしれないよ」
　それを見つけると、いいことがあるかもしれないジンクスがうみねこにある、と総悟が教えてくれた。
「総悟くんが言うように、いいことあるかもねえ。お客さんがいっぱい来るとか」
　それが、羽衣にとってのいいことなのだろう。
　頑張っている皆を見て、自分も負けてられないと張り切る総悟は、店内の掃除が終わると外へ。
「冷やし中華はじめましたみたいだ」
　そう思いながら『一口かき揚げはじめました』と書かれた張り紙をペタリ。

　厨房では、調理担当が分担で下拵え。
「んじゃ、厨房の切り盛り始めっか！　まずは、今日使う野菜の刻みからなー。俺はキャベツの千切りを包丁でやるけど、皆は無理スンナよ」
　手慣れた手つきでキャベツを千切りをする望月を、かき揚げに使う玉ねぎの皮を剥きながら感心して見る澪。
「キミ、料理が得意なのかい？」
「ねーちゃんにこき使われてるからねー。俺様んち、旧市街にある『うさぎ屋』ってお好み焼き屋なんだ」
「なるほど」
「スライサーでもできるぜ。そっちのほうが素早く、綺麗にできるから、慣れない人はそれでな」

このページにイラストを設定する