大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～｜リアクション

大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～

●風船

　市街地のショッピングモールをせわしなく駆け回る佐藤英二は、メモを片手に売り場を見て回っては、使えそうな資材を拝借していく。
　そんな彼ももれいびとは言え、実質的に平凡な、いやそれ以上に純真な男子学生である。いくら『こっち』の寝子島がコピーされたニセモノであったとしても、この窃盗まがいの行為は良心が咎めるものがあったが、非常時にあって、凡人であっても自分にも出来る事をしたいと前向きに考え、ぐっと我慢しながら選択した行動であった。

　見付けられたものをオフロード仕様の自転車に積み込んでモールを出た。
　変電所へ向かう途中に初島優と落ち合うと、モールで見つけて借りてきた双眼鏡で島の様子を確認してみる――　

　最初にシーサイドタウンの大観覧車が飴細工のように捻じ曲げられているのが見えた。
　周辺の建物も酷く破壊されており、まるで竜巻が通過したかのような惨状だ。

　そして、その破壊をもたらした張本人だと思われる存在である巨大サンマは現在、北東へ進路を進め、アウトレットの建物に攻撃を繰り返し、辺りに瓦礫を撒き散らし続けている。

「シーサイドタウン迎撃組も頑張ってるみたいだけど、あの様子じゃ仕留めるのは難しいみたいだね」

　優はシーサイドタウンを突破され九夜山の変電所での決戦に持ち込む作戦を考えていた。
　海岸で戦っていたメンバーからの話では、巨大サンマや半魚人に攻撃は効くらしい。何らかの手段で大きなダメージを追わせれば、撃破する事も可能かもしれない。

　寝子島の地図を広げ、変電所の位置を確認する。なんとか巨大サンマをこちらへ誘導し、高圧電線の網に引っ掛け、大ダメージを与える事ができれば……

　英二と優は持ってきた風船に派手な飾りを付けてヘリウムガスを詰め、それをアウトレット方面から寝子小を経由して変電所に向かうように、何ヶ所からか空に放つ。

　風船は静かに空へ昇って行く。巨大サンマがこれに注目し、追って来てくれればと思ったのだが、注意してみればそれなりに目を引くものの、大観覧車や建物のような巨大構造物を破壊する事に意識を向けている
巨大サンマにとっては、攻撃してくる訳でもなく静かに揺れているだけの風船など排除する対象にもならず、全く存在しないのも同じで、まさに『眼中にない』という状態だった。