大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～｜リアクション

大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～

●破壊するもの・２

　がっぷりと大観覧車に組み付いた巨大サンマは、力の限り鉄骨を揺らし、捻じ曲げて、大観覧車を破壊し、辺りに鉄骨や瓦礫が撒き散らされる。

「なにこれ……？　町を破壊しながらサンマさんが向かってくる……？」

　悪い夢を見ているのだと霧切翠子は思いたかった。しかし彼女もテオの『声』を聞いている。これが夢であれ現実であれ、とにかく目の前の現状をどうにかして打破しない事には寝子島が危機に晒されるという事は本当なのだろう。

「巨大な化け物が目の前に……今私にできることは……！」

　彼女は自分にできる事を探して周囲を見回す。
　辺りにはもれいびの力、『ろっこん』を駆使して防衛を行う仲間たちの姿があった。
　すぐそばでは後輩の新井米太郎がろっこん『似非ヒロイズム』で重力を操作し、近付く半魚人たちを弾き飛ばしている。

「みんなは不思議な力で戦ってるのに……私にはそんな力はない……
　怖い……でもみんながこんなに戦ってるのに、私はどうしてこんなに無力なの！？」

　呆然とする翠子。

　その時、巨大サンマが彼女の近くの建物へ強烈なパンチを突き入れ、崩れたコンクリートやガラスの破片がバラバラと落下。その一部が翠子の頬を掠め、彼女の肌を切りつけて赤い筋が走る……

「痛い………夢じゃないの！？」
「危ないっ！」

　米太郎は無防備な翠子の元へ押し寄せる半魚人の群れを見た。
　大切な人を守りたい――
　その想いが米太郎のろっこん『似非ヒロイズム』の源となり、コントロールされた重力が彼自身を猛烈な勢いで彼女の元へと飛ばす。

「こーくん！？」

　自らの身体を盾に半魚人に突っ込もうとした米太郎の姿に翠子は驚きながらも、自分の為に飛び込んでくれた彼を何とか助けたいと強く願った――
　そして、それに応えるかのように彼女の秘めていた力、ろっこん『バジリカ』が発動する。

　押し寄せる半魚人は彼女に手を触れる事はできずに吹き飛ばされ、同時に助けに入ろうした米太郎まで彼ろっこんの効果が打ち消されてべしゃっと地面に顔面から着地する。

「いてて……先輩、まさかもれいびだったんですか……！？」
「ろっこん？　私にも秘められた力、夢じゃない現実の力、フツウを守るために授けられた力……
　本当に化け物たちは私に近づけないみたい……」

　見れば、吹き飛ばされた半魚人たちが再度彼女に襲いかかろうとしているが、彼女を中心とした半径5ｍ程のエリアには入る事ができず、ただ地団駄を踏んでいるばかりだ。

「この力でみんなを守れるならば、私はもう迷わない！　みんなの盾になる！」

　もはや自分自身の力を認識した彼女の心に恐怖や混乱はなく、新たな光が灯っていた。

「みんな大丈夫？　怪我してるじゃない？」

　ろっこん『光合成』で身体能力を強化し、半魚人たちの攻撃をかわしながら、救急箱と担架を担いで戻って来た毬藻仔が防衛チームの間を駆け回って必要な処置を施して行く。
　幸いな事に重傷を負った者はおらず、軽傷で済んでおり、絆創膏を貼られる程度で済んでいる。

　そんな時、目の前の怪我人の治療に意識を奪われ、毬藻子の注意がそれた隙を狙って、死角から半魚人が彼女に襲いかかって来た。

「まりもこどのォオ～！あぶな～い！　ガブガブゥウ～！」

　その時、すんでの所で毬藻子を救ったのは、美食クラブの記念撮影中に、今回の事件に巻き込まれた茨姓歩だった。歩兵服にフード付きマント、顔の下半分を隠すドクロ模様のマスクといういかにも攻撃的ないでたちだ。

「さんまさん喰い放題ィイ～！　ざがなを食べるとォオ～！　あだまが良くな～る！！」

　毬藻子を襲った半魚人に逆に飛びかかり、頭に噛み付き攻撃。
　食事をとっていなかった歩は、ろっこん『シシャの夜明け』を発動させ、半魚人を文字通りに『頭からムシャムシャ』と貪り食べる。
　
「ぐわばーッ！　ふぇたりてぃ～！」

　その様子はもう、表現するのも恐ろしい光景ではあるのだが、幸運な事に歩に頭を齧られた半魚人はグロテスクな姿を晒すこと無く、光る砂のような姿になって崩れるように消えていった。

「あ、ありがとう……助かったわ」

　どちらが敵でどちらが味方なのか分からないような壮絶な光景に唖然としながらも、とりあえずはと毬藻子はお礼を言うが、当の歩は特に気にする様子でもなく、

「ちっともお腹が膨れないでありますゥウ～　それならァア～
　まりもこどのォオ～　怪我人をォオ～運ぶでありまずかァア～？
　これは食べてはだめでありまずよね……」

　と、怪我人をずるずる引きずって担架に乗せていくのであった。

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大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～

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