幸せのブルー・ブルー・バード｜リアクション

幸せのブルー・ブルー・バード

【鳥に願いを】

　その頃、後木真央さんからの返信を確認した八神修くんは、
「……三回言える長さ、か。盲点だったな……」
　スマホの画面を見て、悔しそうに歯噛みをしつつ言いました。
　そんな修くんに、宮祀智瑜さんは、
「でも、修さんのみんなの願いを叶えようとする考えはとても素敵だと思います」
　と労わるように言葉をかけます。
「……そう言ってもらえると救われるよ」
　それに修くんは苦笑して、頷きます。
「さて、と。それじゃあせめて俺も野々の願いのためにもうひと頑張りするとするか」
（さすがにここで自分の願いだけ叶えてもらうわけにもいかないしな）
　修くんが心の中で苦笑まじりに呟いたそのときでした。
「ああっ……！　ああー！」
　ののこさんの素っ頓狂な声が森の中に響き渡ります。
「……ののこちゃん？」
「どうした、野々？」

「――あ、青い鳥、見つけちゃったーっ！！」

　智瑜さんと修くんのすぐ頭上を青い鳥が飛び越えていったのはその直後のことでした。

「……宮祀、俺が先に追う！　野々を連れて後から来てくれ！」
「は、はいっ！」
　修くんが自転車にまたがり、青い鳥を追って走り出します。
「あ、ま、待ってよぉー……！」
「ののこちゃん、行きましょう！　後ろに乗って下さい！」
　こうして三人は青い鳥の大追跡を始めたのです。

　その頃、御巫時子さん達一行もまた、『ろっこん』の力で鳥達から情報を集めることで、青い鳥のすぐそばまでやってきていました。
「あ」
　と、声をあげたのは時子さんでした。
　彼女が指さしたその先には八神修くんと彼が追いかける青い鳥の姿が――。
　このままでは、もしかすると青い鳥の数が増やされてしまうかもしれない。
　そうすれば、また悲しい思いをする青い鳥が増えてしまうことになる。
　そうなってしまうくらいなら――。
「真央さん！　彼が願いを叶えてしまうよりも先に願いを！」
「えっ、でもなのだ――」
　いきなりの言葉に戸惑う真央さん。
　しかし、すぐに時子さんの瞳が悲壮な決意の光を湛えていることに気づきます。
「……後木さん、行ってあげて」
「――わ、わかったのだっ！！」
　夏夜さんの声にも後を押されて、真央さんは大地を強く蹴って青い鳥へと猛ダッシュを開始します。
　

　一方、自転車で青い鳥を追っていた修くんと智瑜さん達は。
「宮祀、こっちだっ！」
「はい！」
「わーい！　なんか映画みたーい！」
　先に追いかけていた修くんの姿を見つけ、智瑜さんはののこさんを後ろに乗せたペダルを漕ぐスピードを速めます。
　智瑜さんは青い鳥自身の願いを知るべく、「ろっこん」の『想い見る』を発動させようとしました。
　意識を集中し、青い鳥の役に立ちたいと心の中で願います。すると。
「…………っ」
　刹那、智瑜さんの心の中に浮かんだのは青い鳥が望む幸せな世界でした。
　それは努力が正しく報われる世界。
　幸せを掴もうと手を伸ばしたなら、それをすぐには掴めなくとも伸ばしたぶんだけきちんと近づけるそういう世界でした。
　そして、そうして手を伸ばそうとしている人の手に幸せを届けることが青い鳥の役目であり願い。
　そこまで理解したとき、智瑜さんの意識はふっと現実に引き戻されます。
「よーし！　私、願い事言っちゃうよっ！」
　ののこさんの声に、はっと我に返る智瑜さん。
「ののこちゃん、待ってください……！」
「……え？」
　ののこさんがきょとんとした表情で動きをとめたまさにそのときでした。
　どこからともなく小さな影が青い鳥に猛スピードで接近し、叫びました。

「宿題完了宿題完了宿題完了、なのだ！！」

『…………っ！？』
　誰もが息を飲んだその刹那、青い鳥は眩い光を放ち、青い光の粒を撒き散らしてどこかへ消えてしまったのでした。

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