星ヶ丘寮の『ＰＫ』｜リアクション

星ヶ丘寮の『ＰＫ』

　そして、『ＰＫＫ』側のやや一方的な戦いが終わった後、『ＰＫ』側で立っているのはフィリアだけだった。
　刀と庚がフィリアを左右から囲む。
　抜け道は既に刀によって調査済みである。

　「詰みだ、フィリア・ケーレス。いや『ＰＫ』」
　木刀をフィリアに向ける刀。庚は拳を相手に向けた。
　「観念しな」
　一歩一歩距離を詰める２人。

　何事もなく終わると見せかけたその時、ふいにフィリアが刀のほうへと動いた。
　「何を！？」
　思わず、横蹴りを見舞う刀。
　蹴り飛ばされたフィリアは庚の目の前の位置になる。
　「決めろ！　如月！」
　「うおおおお！？」
　庚が胴へのパンチを決めようとしたとき、フィリアがかすかに微笑んだ。

　そして庚には彼女の声が聞こえた気がした。

　（「一方的な暴力を振るうことが普通ですか」）

　１０分後。
　星ヶ丘寮の『ＰＫ』一味はリーダーのフィリアを含めて全員縛り上げられていた。
　龍八が容赦なく亀甲縛りで吊し上げようとしたが、女性陣を中心に反対にあい、普通に捕縛されている状態になっていた。

　「さて」
　鉄パイプ片手に素振りをする龍八。
　「名前と住所などの個人情報と盗んだ下着のありかを洗いざらい吐け……黙秘権を行使するなら実力行使。俺は男だろうと女だろうと容赦せん」
　彼はフィリアに鉄パイプを向ける。
　「ふふっ」
　そんな龍八をフィリアは小さく笑う。
　「何がおかしい」
　「だって我々は『星ヶ丘のＰＫ』ですよ。名前も住所も下着の場所も知らべればわかるでしょうに。まるであなたが拷問したいみたい」
　目を瞑ったまま龍八を挑発する。
　「黙れ」
　ガツン。
　軽くだがフィリアの頭を鉄パイプで小突いた。
　「それにあなたもわかっているんでしょう？　模倣犯がいる以上、全てのパンツが我々の手元にあるわけでもないと」
　「うるさい」
　ガツン。
　龍八は無表情にフィリアを打ち据える。目を逸らすもの、これは罰だと言い聞かせるもの。目を瞑り、耳を塞ぐもの。

　「草薙龍八。それ以上は止めなさい」
　制止する声。それは剣崎エレナだった。
　「邪魔するな。邪魔をすれば警察に対応させる。それこそ星ヶ丘寮の、そして学校側の不祥事になるぞ。それでもいいのか」
　龍八は想定済みと、他の『ＰＫ』対策班を言いくるめた言葉を使う。
　「それは同時に猫鳴館の不祥事になるわよ。それでもいいの？」
　「なんだと」
　鉄パイプを持つ手が緩む。
　「それは困るね」
　「うん！　うん！」
　「ちょっとやりすぎなんじゃないか」
　と、天野、ひびき、大福がエレナの声に続く。

　「『ＰＫ』事件と『猫鳴館の廃寮の噂』は無関係じゃなかったんだ」
　大福は語る。それはエレナの話以外にも彼がろっこん能力で多くの人の声を聞き続けた成果でもあった。
　「俺らが『ＰＫ』事件に関わった理由には少なからず『猫鳴館の廃寮』が関わってる。もちろん純粋な善意のやつもいるかもしれねーけどさ。ともかく、猫鳴館の奴らが星ヶ丘寮に乗り込んで暴れりゃ心証は悪くなるじゃん。例え『ＰＫ』事件を解決したとしても」
　苦々しく大福は言う。
　「つまり、『ＰＫ』退治で猫鳴館の生徒が問題を起こすことを期待していたってことよ」
　大福の言葉を継いでひびきが断言する。
　「これ以上問題を起こすわけにはいかないね、草薙？」
　そう天野に言われ、龍八は渋々と鉄パイプを持った手を下ろしたのであった。

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