【ネコミケ番外編】怪盗へブンの楽しい休日？｜リアクション

【ネコミケ番外編】怪盗へブンの楽しい休日？

序：どこだ、ヘブン？　何する、ヘブン？
　後木真央はシンプルな夏用のスーツを纏い、薄化粧してシーサイドタウンにやってきた。彼女は漫画『怪盗ヘブン』に出てくる記者のコスプレをしてヘブンを追いかけよう、と思い至ったのである。
（貸してくれる人がいてよかったのだ。すっごく助かったのだ！！）
　彼女はぐっ、と拳を握り締めて気合を入れる。テオの声を聞いた時には「ネコミケ拡大版なのだ！　リアルヘブン来たのだ！！」と大興奮し、どのキャラクターで後を追うかちょっと悩んだりもしていた。そして選んだのがお色気担当的な新聞記者だった訳だが……。
「ヘブンは『フツウ』を守っている気がするのだ。真央ちゃんは『フツウ』を守りつつ登場人物に扮して寝子島ミステリーレポートの取材しつつヘブンを捕まえる一斉サンチョ（注：一石三鳥）作戦するのだ！！」
　とまぁ、こんな具合で彼女は気合を入れていた。普段の真央とは違い、ちょっと大人びた姿は見知った者たちからすれば新鮮だろう。ただ、服の下は純白のさらしと下帯（＝褌）であるあたり彼女らしいというべきだろうか？
（もし、普通の人にみられたらまずい事があれば……あれをやるのだ）
　内心でぐっ、と拳を握り締めつつ、真央はヘブンの姿を探し始めた。
　そんな姿の真央をみた何人かがねこったーで『ヘブンを追いかけてる記者まで漫画から出てきた？』とか『彼女の絵は消えてないぞ』とか流れたのはここだけの話である。

「えっ？！　それって本当なん？」
　そんな鍋島奈々美の声に気づいた赤羽勇樹は不思議そうな顔になる。
「どうしたんだ？」
「……怪盗ヘブンが、出現したんやって！」
　奈々美がねこったーで得た情報を口にすると、勇樹はぱっ、と目を輝かせた。彼は正義の為に笑いを起そうと奮起するヘブンを尊敬していたのだ。
「人々の笑顔の為に我が身を犠牲して活動するその姿……まさに『正義』！俺の理想の１つだし、是非ともご教授願いたいぜ！」
　拳を握り締め、次元を超えてやってきたヘブンへの尊敬を益々強める勇樹。傍らの奈々美はというと、こっちも別の意味でわくわくしていた。寝子島中学校新聞部の部長である彼女はスクープの予感がしていたのだ。
「まさか怪盗ヘブンの出現とは！　うーんっ、うちの好奇心が最高潮やっ！　これは早速取材せな！」
「あ、そっちは旧市街だ！！」
　早速シーサイドタウンの中心部へと行こうとして……別方向へ走りかけた奈々美を勇樹がとめる。親友に礼を述べると改めて２人でヘブンの元へと急ぐ。奈々美がねこったーで情報を集め、勇樹が方向修正をしていくのだった。

　そんな事になっているとは知らない森蓮もまたシーサイドタウンへと来ていた。とある事件で芽森菜々緒を庇い、腹部を負傷していた彼は漸く傷が癒えてきた。故に、自分が元気である、と彼女に見せたかったのだ。
（もしかしたら、心配しているかもしれませんからね）
　人伝に菜々緒がシーサイドタウンにいると聞いた蓮は、額の汗を拭いつつ辺りを見渡した。
「どの辺りにいるのでしょう？　探してみるしかありませんね」
　病み上がりで少し身体に違和感はありつつも、蓮は菜々緒を探し続ける。と、そこで見覚えのある少女を見つけた。緑色の髪が特徴的な桜庭円である。蓮は円の方へと歩いていった。傍らには何時ぞやの勉強会で見知った瓜山レイがいた。彼は２人に挨拶する。
「ヤッホー、森君。どうしたの？」
「ええ、実は……菜々緒さんを探しているのです」
　円に問いかけられた蓮は、怪我が回復してきたから……と事情を説明する。
「俺たちは、信じてもらえるかはわからないけれど、同人誌から抜け出した怪盗ヘブンを探しているんだ」
「怪盗ヘブン……さん、ですか？」
　蓮が首をかしげるのも無理はない。普段から漫画を読まない彼は『怪盗ヘブン』を知らなかったのだ。円が説明すれば、なるほど、と蓮は合点がいく。『ひと』である蓮だが、何度も神魂関連のトラブルに出くわしている為、理解があるのだ。
　円とレイから事情を聞いた蓮は、共にヘブンと菜々緒を探す事に。しかし、この時点で２人が一緒にいるとは思いもよらなかった蓮達であった。

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