【ネコミケ番外編】怪盗へブンの楽しい休日？｜リアクション

【ネコミケ番外編】怪盗へブンの楽しい休日？

前騒ぎ：どうにかしなく……ちゃいけないよね？（ヘブンを）

　――シーサイドタウン

　テオドロス・バルツァ――通称テオ――の言葉を偶然、彼の前で聞いた者がいた。恵御納夏朝である。彼女は偶然にも主人公が消えてしまった同人誌を街角で見かけた為、すぐに事情を把握した。
（まさかとは思ったけど……見間違いじゃなかったんだ！）
　厳しい表情の彼女とは裏腹に、テオは興味なさそうに目を細める。
「ののこにさえバレなければ大丈夫だろう。……後はお前達に任せる」
「日没までになんとかすれば、いいんだよね？」
　夏朝の問いかけに、テオは「ああ」とだけ答えると、あっという間に姿をくらましてしまった。彼女は癖のある茶色い髪を揺らし、考える。
（まずはどこにいるか探さないと……！）
　うろ覚えではあったが、漫画でのヘブンは『人が笑えるいたずら』を仕掛けていたような気がする。それに、色々と道具が必要なはずだ。
「まずはホームセンターに行ってみようかな」
　夏朝は１つ頷くと、今いる場所から一番近いホームセンターへと向かうのであった。

　時同じくして、別の場所。テオの声を聞いた桜庭円は直ぐにねこったーを見る。少しでもヘブンの情報をつかめないか、と思ったのだ。
「今後も、あの漫画が読めなくなるのは残念だし……」
　そうやって見ていくうちに『ヘブンのコスプレをした子がアイスクリームを沢山買っていった』といった内容や『何か怪盗ヘブンがらみのイベントでもやるのか？』という疑問などが浮かぶ。現在地でもつかめたら、なんて思っていると……ネコミケで見かけたような男性が、焦った様子で辺りを見渡したり、スマートフォンを見たりしていた。
（……あれって……）
　円はネコミケでの記憶を思い出すと、彼の元へ駆け寄った。
「すいませーんっ！　先日のネコミケで売り子さんをしていた人ですよね？」
「えっ？！　あ、はい……そうですけど……」
　二人の目が合う。と、円はそこで少し驚く。写真で見た事のある漫画の作者、宵宮零（＝瓜山レイ）がそこにいたのだから。思わず声を上げそうになったものの、レイから「静かに」と言われてしまう。
「うわぁ、本物の宵宮先生だーっ！　ボク、桜庭円っていいますっ！　漫画、いつもたのしく読ませてもらっていますっ！」
「それは嬉しいな。応援ありがとう……ってのんびりしてる場合じゃないんだったっ」
　円の言葉に笑顔で応じるレイだったが、すぐに表情を曇らせる。
「どうしたんですか？」
「うーん、信じてもらえるか解らないんだけどね。在庫整理してたら、同人誌からヘブンが消えちゃってさ。そしたらねこったーで見かけたとかあるし……」
　レイが困った顔でそういえば、円は真剣に話を聞く。そして色々考えた挙句、彼女は意を決しテオが言っていた事を語る事にした。流石にネコが話していたとは言えず、そこは黙っていたが……。
　話を聞いたレイは少し考えた後、「君が聞いた話が本当だったら大変な事になるね」と協力を申し出た。円は心から礼をいい、２人でヘブンを探す事に。その流れで円は何か心当たりがないか聞いてみる事にした。すると、レイは懐から同人誌を取り出す。
「在庫整理していた時にちょっと表紙を撫でたんだ。そしたらピカッ！　って光って。で、気が付いたらヘブンが消えていたんだ。信じてもらえるか未知数だけれどさ」
　それを聞き、円は思わず首をひねった。先ほど買ったコミックのヘブンは姿を消していない。その辺りがカギのような気がした。
「ほら、見て。こっちのは消えてないよ。もしかしたら……それがカギかもしれない」
　円はコミックと同人誌のページを見比べさせながら呟いた。

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