寝子島に台風がやってきた｜リアクション

寝子島に台風がやってきた

【台風到着前：猫鳴館、危機一髪！】

　ところ変わって猫鳴館。
　台風接近。台風が来る。ということは雨風強い。
　つまり、猫鳴館、窓やらなんやら色々大変では？
　藤堂月乃は背筋に薄ら寒いものを感じた。
　オンボロ旧寮の猫鳴館は、例え老朽化しても、寮生が必死に修繕して今まで持ち堪えてきたのだ。
　だが、目前に押し寄せる自然の脅威に晒されれば、今回は無事には済まないだろう。
「よし、台風到着前にできるだけの事をやろう」
　藤堂が決意を口にした。
　猫鳴館の寮生の一部が自主的に補修作業を行っているあたり、考えることは藤堂と一緒らしい。
　彼らもまた、愛する猫鳴館を守るため、出来ることをやろうと必死なのだ。
「はい、ガムテープ。これを窓ガラスに×印に貼っておくと良いよ。飛来物がぶつかっても、割れた窓ガラスが散乱しにくいから」
　藤堂は大部屋で作業する寮生たちにアドバイスをしたり、自ら率先して指示を出したりと奮闘する。
「雨戸がある場所は、すぐに閉めてね！　植木鉢も室内にしまって！」
　窓ガラスの補強をしていた藤堂の目に、窓の外の鶏舎が映りんこだ。
　そして気が付く。
「ねぇ、鶏舎って誰か補強した？」
　首を振る面々に、藤堂は焦る。
「大変！　みんなで世話をしている鶏やヒヨコたちを避難させなきゃ！　私、行ってくる！」
　寮生で立てた鶏舎が倒壊したら、中の鶏たちが危険だ。
　彼らは猫鳴館のマスコットにして、玉子という貴重な食料を授けてくれる重要な存在なのだから、保護は最優先に行う必要があるのだ！
　藤堂の必死の救出活動（？）によって、鶏たちの安全が確保され、空き部屋の床に新聞紙を引き詰めて養生板代わりにした。
「念のため、直前まで鶏舎の補修もしなくちゃ！」
　彼女は飴玉を口に含み、自身のろっこん『一粒入魂！』で底上げされた身体能力を駆使して、リズミカルに金槌を振るうのであった。