寝子島に台風がやってきた｜リアクション

寝子島に台風がやってきた

【台風直撃中：猫鳴館防衛作戦】

「ああああああ！？　屋根が！　壁が！　崩れてる！　うわあああああ！？」
　初島優はパニックに陥っていた。
　自治会員として自寮の死守を掲げて行動していたのだが、早速、大部屋の壁の脆いところが崩れ、騒動で何度か破壊された屋根の継ぎ目が吹き飛んだ。
「台風通過後じゃ遅い！　やっぱりやるしかないー！　だって、俺は猫鳴館の自治会員、いや、いち寮生！　ここを愛する寮生の意地があるんだー！　外に出て応急修理してくるー！」
　死亡フラグを言い残し、力強く外へ飛び出していく初島。
　その姿に感化された寮生数名も彼のもとへ馳せ参じた。
「みんなありがとー！　ブルーシートとベニヤ板持ったかー？　とにかく塞げー！　穴を塞ぐんだー！」
　素早く指示を出し、客員は穴の空いた場所を重石で押さえる。
「人住んでる部屋優先、空き部屋は後回しー！　しっかり塞がなくてもとりあえず塞ぐ程度でオッケー！　ていうか後で修繕する時、邪魔になるから！　板は剥がしやすいようにちょっと釘飛び出してるくらいで丁度いいー！」
　雨風の音に遮られないように怒鳴り散らす初島。
　だが、重石が足りなくなってしまった。
　これ以降は人力で抑えるほかなくなってしまった。
「鶏は中に避難させてあるし猫鳴館優先、鶏小屋は放っておけー！　猫鳴館が住めなくなったら鶏飼うどころじゃなくなるんだからー！　小屋くらいなら潰れても建て直せるしー！」
　初島は必死にブルーシートを抑える。
　雨と風で小さな体が吹き飛びそうになる。
「あー飛ばされる飛ばされる油断したら飛ばされる怖い怖い怖いー！」
　泣き叫ぶ初島が、おもむろに鶏小屋へ視線を逸らした。
　そして吹き出した。
「鶏が壁の壁から脱走して小屋の近くにいるー！？　ちょ、シート持っててー！　うわあああああ！？」
　半狂乱のまま、初島は鶏をキャッチ！
「ふー、危ないじゃないかー。あとは部屋の中へ戻して……」
　館の方へ戻ろうとした初島。だが、彼を見た寮生たちは口を揃えて叫んだ。

「初島ー！　うしろーうしろー！」

「なんだよー、後ろに何かある、の……？」
　初島の頭上へ、地盤が緩んで傾いた大木が勢いよく傾いてきた！
　彼は確信した。
（あー、俺、死んだー！）
　初島は逃げられないと悟る。
「俺が死んでもー猫鳴館は死せずー！」
　次の瞬間、太い幹が容赦なく初島へ覆い被さる。
　そこへ飛び出す何者かの影！
　響く轟音！　伝わる衝撃波！
　果たして、彼らの命運は！？