ラクガキ画伯のワンダーランド｜リアクション

ラクガキ画伯のワンダーランド

【起】

　シーサイドタウン駅前の広場に、ワカメ頭の鷹取洋二が現れた。
　その頭を目印に、ラクガキの噂を聞き付けた寝子高生たちが集合する。
「遠くからでも目立つな、その頭……」
　御剣と一緒にやってきた笠原ひびきは率直な感想を述べた。
「ありがとう。この髪型は超お気に入りなんだ」
　褒められたと思い込み、誇張するかのように緑の前髪を掻き上げる鷹取だ。
　これには笠原、微妙な表情を浮かべるだけだ。
「まったく、所有者たるもの、ちゃんと所有物は躾けないとだな」
　双葉仄はやれやれと言わんばかりに頭を振った。
　この世の全ては自分の所有物、と言い切る彼女にとって、ラクガキの野放しは見捨てておけない様子。
「……からんも、手伝う！」
　ちょっとおっかなびっくりにビクビクしているのは、虎渡からんだ。
　人見知りなのか、小麦色の肌と金色の瞳とアホ毛の活発なイメージからはちょっと想像し難いほど内向的な態度を取っていた。
　しかし噂を聞きつけて、事件解決のやる気を見せている。
「芹沢さんに御剣さん、それに逆巻さんと金堂さんも。とても心強いですね。今日はよろしくお願い致します」
　礼節正しくお辞儀をするのは森蓮だ。
　名前を呼ばれた者が森へ軽く挨拶をする。
「森も協力ありがとな、まずは画伯の居場所を突き止めないとだな……」
　若干眠いのか、芹沢梨樹は欠伸を噛み殺す。
（ラクガキ、か。なんか、失礼な気がするな……）
　芹沢は鷹取から受け取ったスケッチを家から持参していた。
　構図は崩れているが、妙に愛嬌があり、見る者の心を和ませる。
（俺だけでも、これをラクガキとは言わないようにしよう）
　静かに心に決める芹沢。
　次に口を開いたのは、どう見ても高校生に見えない男だった。
「よろしゅう頼むぞい、森」
　老獪な雰囲気だが、れっきとした15歳の金堂睦月。
「こっちこそよろしく、森。そういや、森は連絡手段どうするつもりだ？」
　御剣の疑問ももっともであった。
　森は清貧を心掛けており、尚且つ機械音痴なのだ。
　そんな彼がスマホや携帯電話を持っているとは思えない。
「ああ、森は俺と鷹取先輩と一緒に行動するから問題ない」
　芹沢がフォローを入れる。それに合わせて森が一礼をした。
　どうやら事前に話が通っているようだ。
「ラクガキ画伯に直接お会いして、私は話を聞いてみたいと思います」
「そうだね。二手に分かれて、画伯の説得とラクガキを捕獲する班に分けたほうがいいよね」
「私、画伯に会ってみたいでーす！　説得班で！」
　森の意見に、逆巻が提案し、屋敷野がそれに乗っかる。
　これがきっかけとなって、鷹取を含む10名は二手に分かれて行動することとなった。

　画伯捜索＆説得班：逆巻・屋敷野・芹沢・森・鷹取
　ラクガキ捕獲・駆除班：御剣・笠原・虎渡・双葉・金堂

　連絡はねこったー上で行うことを約束し、10名は早速繁華街の路地裏目指して移動を始めた。

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