働く夏の日｜リアクション

働く夏の日

○星ヶ丘寮のメイドさん

　檜扇舞華は、専門学生だが、星ヶ丘寮のメイドである。
　寝子島高校のセレブな生徒たちが暮らす星ヶ丘寮は、フロントマン、コンシェルジュ、警備員などのスタッフが常駐しており、清掃・洗濯などは、基本的にメイドが行う。ルームサービスもある。
　学生は夏休みとはいえ、誰かが仕事をしていないといけない訳で。
　星ヶ丘寮では半分くらいが休暇をとって、残りが埋め合わせをするシフトを組んでいる。
　これで回るのはご主人様である生徒たちもお休みで帰省したりしているからだ。
　同じくメイドである姉は本土に報告も兼ねて帰省しているが、舞華は残り組だ。
　舞華のご主人様は在宅しているので、いつ呼ばれても対応できるようにしなくてはならない。

　共用場所の清掃、供用品の洗濯、納品に対する仕分け作業、調達。
「ここ、絵の具がついてますね……」
　平常より時間に追われることは少ないとはいえ、ぼんやりしてはいられない。
　今日の舞華の掃除の担当地域はラウンジだ。
　いつもより人が少ないので綺麗に保たれている。
「あ、コーヒー切れてる」
　当主様方がいつでも飲めるように設置してあるサーバーだが、淹れるのは概ね使用人達だ。
「今日はこれにしましょうか。豆を取り出してドリップー」
　コーヒーは新鮮さが命である。
　コーヒーメーカーの場合抽出温度か高いため、豆の量を少なめにし挽き目はやや粗めにする。

　その間に清掃を終え、洗濯も納品対応も終わり。
「綺麗になりました。さて何をしましょうか」
（……さっきのコーヒー飲みたいですね）
　勿論サーバーは当主様方用なので手はつけない。
　ではどうするか。
　舞華はご主人に電話をする。
「あーご主人様？　冷たいコーヒーとか飲みたい気分じゃありませんか？」
　ご主人の予想通りの返事を聞き、舞華は笑顔で言う。
「ではーティータイムにアトリエに持っていきますね」
　ご主人様の名義により食糧庫から調達する。
「美味しいコーヒーに合うクッキーも作ってお出ししましょう」
　卵黄のみ使用、バターたっぷりの本格派のクッキーだ。
　アトリエのドアをノックして入ると、創作に没頭するご主人がこちらを見て頷いてくれた。
「こちらに置いておきますね」
　順調らしいことにほっとして、ドアを閉める。
　
「そして作りすぎたコーヒーを自分の部屋で頂きます。正当報酬です、はい」
　のんびりと寛ぎながら、部屋で上等のコーヒーをいただく。
「うん、美味しい」
　次の調達で増量を申請しましょう、と思う舞華だった。

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