【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！｜リアクション

【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！

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（さっきからチラチラと見られるのは何故だ……？）
すれ違う人から時々向けられる視線に、修は微かに首を傾げる。
黒スーツがそんなに珍しいだろうか。
まあ、この暑さの中でという意味では、確かに珍しいかもしれないが……。
「あの、写真撮ってもいいですか？」
いきなりそんなことを言われ、流石に戸惑いの色が浮かぶ。
「えっ、いや……は？　すいません、ちょっと……」
謹んで辞退すると、声をかけてきた人達は残念そうな顔で去っていた。
少々申し訳ない気分にもなったが、別にコスプレでもないしなあ……と思う修だった。
しかし、一体何故なのだろう？

――その疑問は、「ピーチ＆ピーチ」へ到着したことで解決した。
「おう八神も来て」
「サガミ大佐だーっ！」
隣の士を押しのける勢いで机から身を乗り出した空音が、瞳を輝かせる。
「あらホント。そっくりねえ」
スーツ姿を上から下までじっくり眺め、文子は驚きの息を漏らす。
怪訝な表情で、目を瞬かせる八神。
「サガミじゃなくて、八神ですってば」
ハッ！　と空音のアホ毛がピンと天を突く。
「すっごく似てたからつい！　前から思ってたけど、いやぁほんとそっくりだねぇ～」
「そうねえ、これは是非とも一枚写真に撮らせてほしいわぁ」
「しゃ、写真？　ええまあ、撮る程度なら……」
桃原親子の様子に若干引き気味になりながら、「何にそんなに似てるんですか？」と疑問の言葉を口にした。
「えっとね！　ニャンダムに出てくるサガミ大佐ってキャラにそっくりなんだよっ！」
ここは一応原作で、ということでニャンダムの作品公式サイトをスマホで開く空音。
登場人物のところにあるサガミ大佐の画像を見せられると、修も流石に合点がいった。
「……そういうことか」
着ている黒スーツが少々デザイン性が高く、軍服のようにも見える。
それにサガミそっくりな修の容姿も相まって、コスプレのように見えた……というわけだ。
「でしょー！　似てるでしょ！」
「でも、まだそれだけじゃ完璧とは言えないわねえ。これをかけなきゃ！」
おもむろに文子が取り出したのは、伊達メガネ。
確かに、サガミ大佐はメガネを着用している。
「は、はあ……まあそれも構いませんが。その前に、ちょっと一冊見てもいいですか」
取材中、ちらほら耳に入ってきた「掛け算」という単語が気になって仕方なかった修。
ここでならわかるかな、と無造作に手近な所にあった一番上の一冊を手にとる。
――それはちょうど、サガミ大佐×クローム少佐のニャンダム本だった。
「おい八神それは」
士が制止しようとするも間に合わず、修はページをめくってしまう。
「――アッ！」
気付いてしまった、わかってしまった。掛け算の意味を！
あちゃー、という顔で額を抑える士。修は完全に動きが止まっている。
その間に、スチャッと文子が伊達メガネを装着させた。
「不意打ちみたいでごめんなさいね～。でも思ったと通り、これで完璧ね♪」
完成度（？）の高さに、周囲からも歓声が上がる。
当の本人は、薄い本を机に戻し一度ゆっくり深呼吸。
そして――
「そんなに似ているのか、ならば心行くまで撮るが良い」

急にクールな感じに口角を上げ始めた。
……どうやら、何か俺様系のスイッチが入ったようだ。

◇
「えらい盛り上がっとるなぁ……」
そんなやりとりを、休憩中の満帆はブースの隅っこで遠巻きに眺めていた。
盛り上がっているネタがわからないので、どうしてもついていけない。
それにしても、と周りに視線を向ける。
空音の描いた薄い本に、作成したグッズの数々。
（空音ちゃんにこんな特技があるやなんて、知らんかったわ）
満帆は絵だけはかなり苦手なので、これだけ描ける空音は純粋にすごいと思う。
こういうところを知れたという意味では、巻き込まれて良かったのかもしれない。
（……そういえば）
さっきから気になっていた、一冊の見本紙を手に取る。
それは、文子作のフニャンゲリオンの同人誌。
表紙に描かれているのは、満帆のコスプレ衣装のキャラ――確か、ライちゃんと言ったか。
「Ｒ－１８」の文字が右下に印刷されているのだが、それに気づかず無造作に表紙をめくりかけ――。
ガシィ。
「やめとけ」
すんでのところで気付いた士が、それを制した。