【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！｜リアクション

【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！

◇
――８月半ば、夏休みの真っ最中の始発が動き出す時間。
そんな早朝も早朝に、寝子電スタジアムへ向かう人影がちらほらと。
その中には、志波拓郎の姿もあった。
（ね、眠い……うおお……）
うとうとする拓郎。ともすれば意識を手放してふらふらしかける彼を、

「おい寝るな、しっかりしろ。祭りはこれからだぞ」
追分義一が服を掴んで引っ張り戻す。
「あ、ああ……ありが、とう……」
眠い目をこすりこすり、頑張ってついていく。
しかし、こんな時間から並ばなければならないとは、一体どんな修羅場なのか。
戦々恐々とする拓郎だったが、スタジアムの前まで来て合点がいった。

始発の時間だというのに、既に待機列ができていた。
「こんな時間なのに……もう、並んでる人が……」
驚きに、拓郎の眠気もいくらか吹っ飛ぶ。

「ネコミケで目当てのものを確実にゲットしてえなら、これくらいは当然だ」
唖然とする拓郎の服を引っ張って、義一は列の最後尾へと向かう。
「拓郎、水分と塩分はきちんと持ってきてるか？」
「うん。ちゃんと……持ってきた、ぞ」
鞄から、スポーツドリンクと塩キャンディの袋を取り出す。
「ならよし。あとは、こまめに摂取するのを忘れるなよ」
スタジアム内の人口密度が生み出す熱気と湿気は、想像を絶するものがある。
水分と塩分の補給を怠れば、熱中症やらなにやらでぶっ倒れるのも待ったなしだ。
「それから、トイレは尿意を感じる前に並んでおくのが賢い立ち回りだ」
「……そんなに混む、のか？」
「ああ。トイレが最大手だと言っても過言じゃねえくらいにな」
言葉面だけだとまるでギャグだが、義一の表情は真剣そのものだった。
「トイレが、最大手……」
つられて拓郎の表情も真剣になった。
「場所は中に入ったらまた説明してやる」
「ああ……頼む、な」
不意に、義一がそうだとこぼして自分の鞄をあさり出す。
取り出したるのは、人を殴り殺せそうな分厚さの一冊の本。
「お前、ちゃんとカタログは買って目ぇ通したか？」
そう、この鈍器めいたい本こそはネコミケのカタログ。
注意事項とサークル、企業ブースの詳細な情報が掲載された、ネコミケ参加者必携の書だ。
「買ったし……目も通した、ぞ」
「よし。じゃあ会場の配置図あったろ。はぐれたりした時、落ち合う場所を決めとくぞ」
「わ、わかった」
開場まではまだ数時間。
義一によるアツいネコミケ指導は、まだまだ続く。

◇
朝八時。待機列もちらほらと伸び始めてきた頃。
ニャンダムTシャツに身を包み、赤猫リュックと保冷キャリーを携えた後木真央は――

熱心にコミケのカタログに目を通していた。
もちろん、来る前に何度も見てはいるのだけれど。
友人たちのブース配置を、最後の確認中だ。
「校内新聞用に寝子高生の雄姿を撮るのだ。被写体さまにも贈呈なのだ♪」
保冷キャリーには差し入れ用の諸々を満載しているし、取材準備はバッチリだ。
趣味の買いあさりもあるし、楽しい一日の予感にそわそわしながら、今か今かと開場を待つ。
まあ、あと二時間くらいは先なのだが。

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