【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！｜リアクション

【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！

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休憩を終え、若と一二三は「bonheur」へと戻った。
「若、一二三。おかえりなさい」
「ただいまー。これ、怜ちゃんにお土産だよ！」
はい、と若が差し出したのは小さな袋。萩屋の屋号が印字されていた。
「ありがとうございます。……和菓子、ですか？」
「はい。ネコミケ饅頭と言って、今日限定の品だそうです」
「なるほど。わざわざありがとうございます」
軽く頭を下げ、包みを受け取る。
「これから休憩なので、頂きますね」

メイドが食べ歩きをしているのは、あまり良くはあるまい。
そう思って、怜は屋台をぶらつく前に、出店の裏でネコミケ饅頭の包みを開けた。
表面に、ネコミケのマスコットの顔が入っている。
「……なるほど、だからネコミケ饅頭ですか」
口に運べば、あんこの甘みが裏方に接客にで疲れた身体に染みた。
せっかくだし、お礼も兼ねて二人の分を買って戻ってくるのもいいかもしれない――なんてことを考えながら、出店ブースへ。

回転率の高そうなところで、手早くご飯を済ませる。
時計を確認してみれば、ネコミケ饅頭を買うのを考慮に入れても、まだ休憩時間には余裕があった。
思い立って、小説本を出しているサークルを巡ってみることにした。
ひとえに小説本のサークルと言っても、色々なものがある。
人気のアニメやゲームの二次創作が多数を占めるが、オリジナルもいくつか。
オリジナルだと、やはりというべきかライトノベル系が人気。
（やはり今は、ああいうのがはやりなんだな……）
そんなことを考えながら、ふっととあるサークルを見て足を怜は止めた。
（これは……）
なんと、彼女の作品である『猫と少年』の二次創作本があったのだ。
「……すいません。これ一冊ください」
思わずお買い上げ。
まさか、自分の本で二次創作が出されているとは……正直、思いもよらなかった。
自分の作品が、他の人の糧になった――その事実が、とてもうれしい。
「この気持ちで、午後も乗り切るとするか」
呟く怜の――クルバトフの口元には、微かに笑みが浮かんでいた。

◇
本を購入した露草が、タルトとみゆきのサークルを後にした。
「ありがとうございました～♪」
午後の売り子当番をしていたタルトが、去っていく後ろ姿を見送る。
薄い本には詳しいが、売り手になるのは初めてなタルト。
お客さんがどれくらい来てくれるか不安だったけど、ちらほらと買ってくれる人が居てちょっと安心した。
「みゆきちゃんのコスプレもちょっと見てきたいな～」
ふと、コスプレ広場の方向へ首を伸ばしながらぼやく。
当然、そんなことをしたって見えるはずがないのだけれど。
「誰か店番引き受けてくれないかな？」
さすがに、スペースほったらかしにしていくわけにはいかないし。
誰か来てくれないかなー、ともだもだしていると、
「タルトもサークルば出しとったですか」
聞き覚えのある声がした。
「倉前先輩だ～、こんにちは♪」
七瀬が、少々重そうな鞄を抱えてスペースの前に立っている。
「どうも。タルトのとこも合同サークルですか。とりあえず、本全部ください」
「はーい、ありがとうございま～す♪」
一揃い手渡す拍子に、タルトはハッと思い付いた。
「どうしました、タルト」
首を傾げた七瀬に、タルトはちょっと身を乗り出すようにして言った。
「店番お願いしてもいいですか？」
「……うちが店番、ですか？」
「ちょっと行きたいところがあって、その間だけ。本読んでてもらっても構わないので～」
「そうですね、歩きっぱなしで足ば疲れてきたところですし……まあいいでしょう」
特に思案することもなく、あっさりと引き受けてくれた。
「やった～♪　ありがとうございます、倉前先輩♪」
簡単に店番の仕事――といっても、お金の計算くらいだが――を説明し、タルトはコスプレ広場へ向かうのだった。