【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！｜リアクション

【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！

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出店ブース、変装メイド喫茶「bonheur」。
夏の暑い中、熱気溢れるネコミケのお手伝いに呼ばれた、十文字若菜、高梨彩葉、氷華・クルバトフの三人。
「bonheur」でのいつも通り、カツラをつけてメイド服に身を包み。
――今はそれぞれ、

「若」と、

「一二三」と、

「怜」。
「bonheur」のメイドであり、それ以外の何者でもない存在へと変装している。

ネコミケは夏の一大イベント、ここで張り切らずしてなんとする。
若が二人に、「頑張ろうね！」と声をかければ、
「はい、この熱気に負けないように頑張ります！」
一二三が元気よくそれに応じる。噂には聞いていたけれど、ここまでの熱気だとは思わなかった。
「二人とも、水分補給はしっかりとしなさい。いいですね」
メガネの縁をくいっと持ち上げる怜。その声には、メイド長らしく威厳が溢れている。
怜は以前、ネコミケによく似たイベント――つまり即売会の類に参加したことがある。友人に連れられてのことだ。
その時の熱気も凄かったが、ここも熱気も相当だ。
一二三と若は、揃って怜の言葉に頷く。
「bonheur」のメイド服は、正統派の長袖長スカートタイプ。
ただでさえ大変なこの熱気の中では、尚の事辛い部類の格好だと言える。だから、水分補給はしっかりとしておかないと。
そうこうしているうちに、お客さんがやってくる。
一二三と若が、接客へ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「いらっしゃいませ、ご主人様」
ご主人様をテーブルへご案内し、提供するのはフルーツたっぷりの特製ドリンク。
フルーツの爽やかな甘さとドリンクの冷たさが、暑さと熱気を浴び続けたご主人様の身体を癒す一品だ。
それだけでなく、
「こちら、私たちメイドが愛情を込めて作った焼き菓子です。よければお召し上がりください」
花や星、他にも様々な可愛い形のクッキーもおまけについてくる。
数が限られているので、先着百名のご主人様限定だけれども。
「お、可愛らしいおまけだねー」
「種類の提案をしてくれたのは、若さんなんですよ」
一二三が微笑んで紹介すれば、
「でも、作ったのはメイドの皆でですから！」
若も笑顔を一二三とご主人様に向ける。
「ドリンクができましたよ」
裏方に回ってドリンクの補充やフルーツのカットを行っていた怜が、新しくできたドリンクを銀盆に載せた。
「はい、メイド長！」
「bonheur」のネコミケは、まだまだ始まったばかりだ。

◇
企業イベントから、インディーズバンドの演奏まで。
一日中何かしらが行われているライブスペースでは、現在乙女ゲーム｢終焉のアストライア｣のプロモーションが行われていた。
ステージに立ち、主題歌「ＳＰＩＣＡ」を歌っているのは深護黎生。
元はモデルだったのだが、事務所の社長の勧めで歌手・声優として新たにデビューを遂げた。
攻略キャラの一人、純白の剣に魔法を纏わせ戦う将軍ハルトヴィヒ・アイマーの担当声優でもある。
ステージ衣装は、そのハルトヴィヒのコスプレだ。

元々ハルトヴィヒが黎生に似たキャラということもあって、バッチリはまっている。実際、彼のコスプレした宣伝用アイテムが多数作られている程。
主題歌が終わっても、ステージはまだ終わらない。
今度はゲーム中のセリフを囁くお仕事が待っている。
「寄るな。偽物の女神め」
彼が台詞を発する度、
「俺は途方もなく愚かだ。女神に惚れるなんてな」
黄色い歓声が観客席の至るところから上がる。
初めは「モデル上がり」と軽視されていたが、声は馴染んでいるし歌も上手い。
今ではすっかり、ユーザーにも受け入れられている。
「お前をこのまま奪い去って独り占めにしてしまおうと、何度考えただろうか。愛しい……お前が、欲しい」
巻き起こる歓声が、彼が受け入れられたことの何よりの証。
騒がしい人や場所は苦手だけれど、自信を持って何事もないように振る舞い続ける。