ひまわりと『向日葵』｜リアクション

ひまわりと『向日葵』

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本土の予備校での夏期講習も無事終えて、迎えた１日。
八神修は、カーキーを連れてひまわり畑へやって来ていた。
以前色々あって拾ってきた、柴犬の子犬だ。
週末にはトレーナーの所で訓練をつけてもらって、毎日一緒にランニングもしている。
飼育員の手を借りることもあるが、給仕や世話もできるだけやっている。
その甲斐もあってか、すくすく育っている。

ひまわり畑の中を、元気よく走り回るカーキー。
「ひまわりをかじったり、地面を掘ったりはしちゃだめだぞ」
そう修が言いつければ、「わかった！」とばかりに一声吠える。
賢くて、飼い主の言葉を良く忠犬――と言ってもいいだろう。
ただカーキーを走り回らせているだけでは寂しいし、修も身体を動かしたい。
ということで――
「行くぞカーキー、とってこい！」
ボールを投げ上げる。
とはいえ、場所柄あまり思いっきりは投げられないのだけれど。
うっかり他の人に当たったりしたら、大変だ。
それに、ひまわりがやたらと大きいのでボールを見失いかねない。
ほどほどの距離に落ちたそれを、カーキーは追いかけていく。
しばらくすると、ガサガサとひまわりをかきわける音。
しっかりとボールをくわえて、カーキーが戻ってくる。
「よーし、いい子だ」
頭を撫でてやると、嬉しそうに尻尾がパタパタ。
それから次は、追いかけっこで駆けまわってみたりだとか。

流石に夏の暑さの中、追いかけっこをすれば疲れるのもあっという間。
「少し休もうか」
ひまわり畑を一望できる日陰へ移動して、まずは水分補給で一息。
それから、水彩色鉛筆と和紙のハガキを取り出す。
ハガキの上に鉛筆を走らせ、ひまわり畑をスケッチする。
実家の分と、それからもう一枚。残暑見舞いに送るのだ。
ふと走らせる手を止めて、カーキーの方に視線を向ける。
「なぁカーキー、直接渡すのと郵送とどっちが良いと思う？」
もちろん、カーキーがそれに答えてくれるわけもなく。
つぶらな瞳が、ただ見上げるばかり。
何とはなしに苦笑がこぼれ、カーキーの頭を撫でる。
「そうだ、カーキーもモデルになってみるか？」
するとカーキーは、急に修の周りをくるくるとかけはじめる。
どうやら、じっとしているのが我慢できなくなったようだ。
「ああ、そうだな。じっとしているのは勿体無いよな」
２、３度、主張するように吠える。
「ははは、分かったわかった」
大分体力も回復してきたし。
スケッチは一度中断して、ひまわり畑へと続く道へ戻っていく。

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