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落ちるだけの
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見開いた眼に、青空が飛び込む。短い黒髪が耳元で激しく風に惑う。咄嗟に伸ばした手は風すら掴めず、
「……んなッ?!」
空を切って真っ逆さまに落ちるまま、
伊予 祐
の上げた叫び声は風になって飛んでいく。遥かな下にあるはずの地上を見る余裕はないが、落ちてしまえば五体が粉々に砕けてしまうことくらいは容易く想像がつく。
(南無三!)
叫び声と共に吐き出した息を吸い込むことも忘れ、祐は晴れ渡ってどこまでも青い空を見詰める。
(俺は死ぬのか?)
風が耳元でどうしようもなく暴れる。為す術を思いつけず、半ば呆然と絶望に呑まれ掛けて、
「……きゃっ!?」
風の喚き声よりずっと小さく可憐な悲鳴が、けれどはっきりと耳に届いた。祐の瞳がその瞬間に力を取り戻す。声の主を探して素早く空を見渡す。
そうして、黒髪を風に翻弄されながら落ちる
雪代 伊織
の姿を見つける。
苺の如く鮮やかな紅の瞳を少し慌てたように大きく見開き、スカートの裾を際どく翻らせ、少女は空を、――祐の目の前の空を、落ちてくる。
こちら目指して飛び込んでくるように空を落ちる少女の姿に、気になるひととの思いがけない邂逅に、祐は一瞬状況を忘れる。少女に見惚れる。
「祐、さん?!」
明るく澄んだ紅い瞳を瞬かせ、伊織が祐の名を口にする。安堵の色さえ混ざった伊織の声を聞いて、心臓が跳ねた。
(君だけでも助けなきゃ!)
青空目指し、落ちてくる少女目指し、必死に手を伸ばす。
伸ばした指先に、少女の頬が淡く綻ぶ。落ちている現実が、まるで夢であると気付いたかのように、祐に向けて両腕を精一杯に差し伸べる。
伸ばされた伊織の華奢な腕を掴む。風に逆らって抱き寄せて、
(……あれ?)
体に巻きつく風がふわり、優しくなった気がした。
落ちているような飛んでいるような不思議な感覚に包まれ、二人は顔を見合わせる。
腕の中に伊織を抱きしめ、照れるよりも先、
「すげぇ! 飛んでるよ俺!」
祐は少年のようにはしゃいだ。風を全身に集め、両手足を広げる。
「……わぁっ!?」
「大丈夫だぜ、ほら!」
驚いて腕にしがみ付く伊織に、祐は顔中に笑みを弾けさせる。両手を繋ぎ、二人で輪になる。くるり、風に舞い上がる綿毛のように宙に踊る。
「わ、きゃあっ」
伊織の驚きの声が楽しげな笑い声に変わる。
片手と片手を繋いで、二人で空に踏み出す。羊雲を階段のように踏んでふわり、二人で飛び跳ねる。笑い転げるように空にダイブする。青空を滑り降りる。
「現実ではない、ですよね?」
風に長い黒髪をなびかせ微笑む伊織に、
「夢かもしれないけど目一杯楽しんじまえ!」
祐は悪戯気に笑い返す。
「はい」
どこまでも続く空に真直ぐな瞳を向け、伊織は頷く。
「折角ですし、楽しんで落ちてみましょうか」
空に踊る綿毛のように、羽毛のように、二人は手を繋いで空をゆっくりと落ちて行く。
ベールのような薄雲をひとつ潜り抜ける度、青空に黄金の色が濃くなる。空を降りれば降りる程、黄金に紅が重なる。やがて空が鮮やかな夕日の色に染まる頃、二人は丘の上に建つ白亜の建物の屋上に爪先を着けた。
「ここは……」
先に降り立った祐の手に助けられ、伊織は茜色に染め上がる広い屋上に立つ。
風の消えない屋上に、懐かしい視線を巡らせる。
夕風が冷たく流れる屋上には、誰かが植えたきり忘れてしまった向日葵の鉢と幾つもの物干し台。眼下に広がる茜の町並みを見下ろせる屋上の端に並んで、清涼飲料メーカーのロゴが入った赤いベンチ。
誰も居ない寂しい屋上に、見覚えがありすぎた。
思わず、あの頃の自分がベンチに座り込んで本を読んではいまいか視線を投げる。
(生まれてから十歳まで、ずっと)
伊織はこの病院で過ごしてきた。
視線を向けたベンチに、あの頃の自分の姿は無い。
(昔の私は)
あまり喜怒哀楽のはっきりしない、人形のような子供だった。あの頃は、自分にこんな未来が開けているなんて思いもしなかった。
夕日の当たるベンチに消毒液のにおいの染み付いた小さな体で蹲って、未来を信じられないまま、何百冊と本を読んでいたあの頃を思い出して、伊織は瞳を伏せる。
とは言え、病院自体に嫌な感情は無い。ここに居たからこそ、生き延びられることが出来た。ここで生き延びられたからこそ、今の自分の幸せがある。それはしっかりと理解している。
それでも。この場所に来るとどうしても昔を思い出してしまう。
未来が信じられず不安だった。
自分の心臓がいつ止まってしまうか分からなかった。
死ぬのがとてもとても、怖かった。
あの頃の息苦しさまで思い出してしまい、助けを求めるように祐を見る。さっき抱き寄せて助けてくれた手に手を伸ばし掛けて、
「懐かしいな」
ぽつり、祐の呟きに伸ばしかけた指先を躊躇う。
「懐かしい、ですか?」
「うん」
伊織が伸ばし掛けて止めた指先を、そうと知らず祐は無造作に掴む。こっちこっち、と伊織の手を引いて、赤いベンチの傍に寄る。
「もう十年ほど前、お袋が病気がちで入院しっぱなしだったからよく見舞いに行ってたの。その病院の屋上にそっくり」
ここから見る夕日がすごく綺麗だったんだ、と祐は横顔に夕日の色を浴びて瞳を細める。
「そう、まさにこんな感じ」
黄昏の黄金色した祐の瞳を見詰め、祐の瞳が見詰める夕日を見詰め、伊織は繋いだ指先にほんの僅かに力を籠めてみる。
「俺が中学生くらいのとき、小さな女の子に会ったんだ」
「こちらで、ですか?」
「隣の病室に居た子だったんだけど、無表情で冷たい感じの子でさ」
その小さな少女がそこに居るかのように、祐は赤いベンチに懐かしげな視線を落とす。
「なんか気になって、話をしたり内緒で連れ出したり色んなことしてた。いつの間にか居なくなっちまったけど、今は元気にしてるかなあ」
(……そう言えば)
祐の昔話を微笑ましく聞きながら、伊織は思い出す。
昔、よくこうして年上の少年と手を繋いで一緒に夕日を眺めた。どこの誰かも分からない、明るい笑顔と声をしたお兄ちゃん。
(彼が来るのを心待ちにしてましたっけ)
あの頃は、じっと待つことしか出来なかった。誰かが差し伸べてくれる手を、蹲ってずっと待っているだけだった。
(でも、今は)
今は、昔の様に誰かから差し伸べられる手ばかりを取っているわけではない。
この体は昔よりもずっと元気に動く。
この心は昔よりもずっと元気に弾む。
「私は今、とても幸せでございます」
手を伸ばせばすぐそばに、誰かのぬくもりがある。それを幸せと言わずして何と言おう。
長く艶やかな黒髪を風に揺らし、心の底から幸せを謳う美しい少女と、記憶の中の儚げな少女の面影が重なって、祐は風に瞬く。もしかして、と思ったけれど、
(気のせいかな)
あの少女はもっと冷めた瞳をしていたように思う。どれだけ近くで手を握っていても、どれだけ長く傍らに寄り添っていても。少女の心には届かない気が、あの頃はしていた。
けれど、今、隣に立つ少女は、手を伸ばせば届く距離にいてくれる。
(たとえ夢でも俺は……)
取り合ったこの手を、離したくはない。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年07月14日
参加申し込みの期限
2014年07月21日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年07月21日 11時00分
参加キャラクター一覧
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