ドラゴン喚ぼうぜ！【蛤】｜リアクション

ドラゴン喚ぼうぜ！【蛤】

　　【新妻は海からの天然素材も使用します】

　その場には、置かれた場所からそのままに割烹着と三角巾が置かれていた。
　「オー！　無事でしターカ！」
　その光景に、深縹露草は感動を隠せない。
　この二つだけはキャンプ場において、唯一の私物、露草の置いたものであった。
　今はキャンプ場にて皆があちこちの道具を普通に使用している為、公共物として認識されてもおかしくなかったのだが、持ち主のインパクトが、持ち物にもオーラとして残っているのか、誰も手にしようとしなかったようだ。

　露草は、いそいそとその二つを着用する。
　これで調理に向かう立派な主夫の完成──なのだが、
　「……こ、これはこれで恥ずかしいデース……」
　現状、露草の衣類は、下着以外完全に溶けていた。
　そこに割烹着と三角巾。下着は、紺のボクサーブリーフである。

　後ろから想像してみよう。
　美しいロングの艶やかな黒髪にスタイルの良い肢体。下着着用とはいえ、割烹着と三角巾。

　下着さえ見なければ、これはとても良い人妻新妻スタイルであった──……189cmの身長と細いがそれに見合った体格さえなかったら。
　言おう。今ちょっとだけ、神が憎い。

　「恥ずかしがっていても始まりまセーン！
　台所の奪い合いが始まってマース！　これは急いで作らなければ……！！」
　そう言うと露草は包丁を片手に海辺の方へ走って行き。
　しばらくして、新鮮な昆布を片手に戻ってきた。
　様子を見れば、丁度キャンプ用のガスコンロが空いているところ。
　「こちらを使いまショーウ」
　一時だけシンクを借りて、戦闘中にも切り分けていたハマグリと昆布を洗い流し、
　水と一緒にガスコンロの鍋に入れて火にかける。
　しかし、火にかけすぎればハマグリの身は固くなってしまう。

　「殻が開けば丁度よい位なのですガ……
　殻が無い以上、自分の舌に懸けるしかありまセーン」
　何度か思案して、味を見て確認をすること数回。

　露草は出来上がりに満足したように呟いた。
　「喜んでいただけると良いのですが……」
　
　
　【味は保障付き！　潮汁、完成！】