ドラゴン喚ぼうぜ！【蛤】｜リアクション

ドラゴン喚ぼうぜ！【蛤】

　　【お料理しましょう！】

　こうして、巨大ハマグリ騒動は一端の幕間に入った。
　伊賀解理の【代理告白】の威力は本人の空腹の為、かなり軽減しており、
　「撃ち足りないけど……うぅ…空腹が……」
　砂浜にうつ伏せに倒れ、そのま動かなくなってしまった。

　助けに入りたいが、上半身は『つけてない』
　触るのも躊躇われる乙女の柔肌、完全半裸の上半身。

　思春期の高校生及び年若きフリーターの彼ら、彼ら彼女らは、解理の介抱をするのを戸惑い躊躇い、食事が出来るまでの間はそのまま休ませる方向で落ち着いた。
　せめてもの餞ならぬ、目のやり場に困る良心として、ほぼ数少ない服を溶かされていない八神修が、そっと彼女に自分の上着を掛けた。

　そんな、幕間を挟みながら──
　冴木竜司がさっそくキャンプ場を確認する。

　「蛤って言ったら、ボンゴレだろ！
　何故か材料とかも用意されてるし……」

　安全となったキャンプ場も奇跡的に無事だった。
　解理のろっこん【代理告白】を最中に受けていたにも拘らず、まるでバリアでも張ったかのように、全ての調理器具類に到るまで全てが無事だった。
　よくよく見れば、冷蔵庫まで用意されている。
　中には様々な飲み物と、食材がこれでもかという位に詰め込まれていた。
　冷蔵庫の中はキンキンに冷えて、野菜室も食材も新鮮そのもの。

　どうやら、
　【コンセントと電源・電力・燃料の仔細は、このシナリオから旅に出たようです】

　
　「よし！　俺が漢のパスタ料理を見せてやるぜ！
　幼女の為に！」
　流石、漢。冴木竜司は幼女に対してぶれると言う単語を知らない。

　竜司が食材を手に取る姿を目にして、傍で興味深そうながらも理解の程が出来ないという表情で、哀坂子夜は竜司の様子を見つめていた。
　「哀坂先輩、すみません、パスタを茹でてもらってもいいですか？」
　「……君は……確か竜司君……と言っていたね……
　作って……欲しいのかい……？
　それは……命令かな……？
　命令なら……従うよ……フフ……」

　「いや……お願いなんですけど……先輩に命令とか出来ませんし……」
　──竜司の脳裏に、僅かながらに形にならない嫌な記憶が煙の如く湧き上がる。　
　「お願いは……聞けないね……」
　いつもと変わらない、儚げな薄い笑み。
　竜司は強烈な不快感と共に、その光景を思い返した。

　──竜司には、厳格な父がいる。
　それは厳格と表現するには、苛烈すぎた。
　竜司は、それを過敏に忌み嫌う。

　「(命令とか……親父みたいに尊大な態度でそんな事他人に言うなんて出来ねぇよ。
　……俺は紳士だ…親父みたいにはならねぇ……)」

　賑やかだった竜司が、急に黙りこくり。
　周囲は何事かと、彼の方へと目を向けた。
　
　その沈黙をもってして、やっと我に返ったように、当面の覚悟と周囲への不安を考え、顔を上げる。
　「分かりました。俺がやります」
　ようじょの名前連呼時よりも、遥かに……そして桁違いなまでの凛々しさで、竜司は答えてパスタを沸騰した鍋に広げる。

　しばし、その様子に小首を傾げて眺めていた子夜であったが、何を思ったのか、シンクに立ち鍋を見つめる竜司の背中に、そっと抱きしめるように密着して、彼の手に己の手を添えた。
　その手際は、竜司の料理の腕の遥かに上を進んでいた。

　「え、て、手伝ってくれるんですかっ？
　つ、つーか……せ、先輩！？　みっ密着しすぎでは！？

　うぉぉぉ！！！　気持ちいい！！」

　【竜司のろっこん発動条件】
　エロや幼女への想いを大声で叫ぶ。

　ろっこんの発動条件を満たし、竜司は全身の筋力強化で調理の手際がザクザク進む。
　……一連の流れを見ていた周囲から、「なんと残念な」(一部「なんと羨ましい」)という憐れみと賞賛の目で見つめられながらもかなり良い完成度のボンゴレを作り上げたのであった。

　【ボンゴレ１つ目、出来上がり！！】