【ネコミケ】萌えろ！２日目の幻想バトルロイヤル！｜リアクション

【ネコミケ】萌えろ！２日目の幻想バトルロイヤル！

<３>

　ネコミケ会場は、一部のカップルにはデート会場でもあった。
　鬼崎つくしは表情を表にこそ出していないが、平坦な胸は急速に鼓動を打ち続けていた。

「お兄ちゃん……、本当に今日は、ずっと私と一緒に見て回ってくれるの？」
　たれ目のマリンブルーの瞳が、隣の男性の顔を写す。
　その相手とは？

「ああ、今日は『怪盗紳士パピヨン』として、つくしちゃんのエスコートをさせてもらうぜ！」
　~~ロリコン変態~~紳士の冴木竜司だった。
　ちなみに、彼のコスチュームは『ミルキィコップス』という萌え系婦警アニメの敵役のコスチュームである。
　ロリコンで幼女に飴を配るなど、竜司と共通点が何故か多い。
　早速、竜司はカバンの中から、ミルク風味が優しい味の飴『ニャルキー』をつくしに差し出して、こう言った。
「食うかい？（キメ顔）」
　後ろを振り向きながら、角度を付けて言い放つ姿にカリスマを感じる。
　実際、つくしはその姿に頬を赤らめて見蕩れていた。
「お兄ちゃん、かっこいい……」
「……ッ！　つ、つくしちゃんこそ、俺の贈ったビーズの髪留め、似合ってるぜ……！」
「ん……ありがとう……ございます……」
　つくしは熱に浮かされたような眼差しで、とろんと惚けていた。
（お兄ちゃん……やっぱり、素敵……！）
　つくしの初恋相手は、この変態竜司なのだ。
　家庭の事情で、父親から辛く当てられていた幼い彼女を、竜司は割って入って助けたのだ。
　その日以来、つくしにとって、この~~ロリコン~~竜司は、英雄であり、最愛の男性であるのだ。
　竜司も竜司で、当初はロリィなつくしに入れ込んでいたようだが、最近は心変わりがあったのか、一歩引いた立場で交際を続けている。
　彼曰く、『Yesロリコン！ Noタッチ！　本物の幼女に手を出したら、そいつは紳士とは言えないんだぜ……』らしい。
「髪留めを選んで正解だったな。つくしちゃんの白い髪に、とても……似合う、から、な……」
　確かに、薄紅色のコスモスを象った髪留めは、つくしの髪色によく映える。
　竜司も顔を赤らめて、なんだかそわそわと落ち着かない。
　モニョモニョしている内に、つくしの方から竜司の手を掴んで引き寄せた。
「……どこでもいいから、早く連れてって？」
　そして低身長からの上目遣い。
　あざとい。だが彼女は無自覚で行ってしまうイノセントな存在だった。
　竜司もそれを理解しているらしく、デレデレになりながらも年長者らしく彼女を手を優しく引いた。
「よーし、おにいさん頑張っちゃうぞー！」
　その２人の様子は、仲のいい兄妹というより、年の離れた男女のカップルにしか見えなかった。
　神は言っている。
　そのまま爆ぜろ、と。

　しばらくして、切り離された世界で２人は身を寄せ合って逃げ回っていた。
「これは……テオのろっこんの力……？」
　つくしももれいびだ。
　だが、実際に経験するのは初めてだった。
「ちくしょう、クローネめ、よりによってデートの時に！」
　竜司は上空を見上げて、忌々しそうに舌打ちをした。
　この異変を解決しようと、拳を強く握り締める。
「フツウを守って、つくしちゃんと一緒にネコミケを楽しむんだ！」
「お兄ちゃん……解決に動くんですね……。私も……手伝う……」
　つくしも最愛の男性を案じ、同行を願い出てきた。
　そんな彼女の頭を優しく撫でる。
「つくしちゃん……、ありがとな！　俺が守ってやるからな！」
　力強く宣言する竜司の姿に、更に胸の奥があったかくなるつくしであった。