運に見放されたあいつ｜リアクション

運に見放されたあいつ

「どうでもいいさ。これ以上迷惑かけるってなら、こっちもそれなりの対応をするまで」
　飛び出した御剣が少女を取り押さえようとするが、近づいた瞬間、近くの水槽が割れて、水が御剣目がけて吹き出す。
「こんなもので足止めしたつもりか」
　なおも突き進み、ついに少女のフードマントにその手が触れる。
「悪さばかりしやがって……うっ？」
　ところが御剣の動きがピタリと止まった。
「うわあああ！」
　そして突如その場で悶え始めた。
「ど、どうしたぁ！　御剣ぃ！」
　その様子に飛びだす立井だったが、
「な、なんじゃこりゃあ！」
　同じく悶え始めた。
　その背中からダイオウイカの足がうねっているのが見える。
「まぁ……あれもきっついねぇ」
　八十八旗が気の毒そうにその様子を見守る。

　やがてイカの猛攻から解放された御剣が少女を睨む。
「どうやら話してくれる気はないようだ」
　そしてため息をついて少女から離れる。
「お願いです！　あのペンダントは大切なものなんです！　代わりにあなたの欲しい物をあげるから！」
　塔ヶ崎が少女の前に出て頭を下げる。
「なぁ」
　その様子を見た八十八旗も少女の前へとやって来た。
「俺は運がどうのって言うのは信じてないけどさ。やっぱり盗んだ物は返すべきだよ。瑠亜ちゃんのように、それがその人にとって大切な物だったりするんだし」
　穏やかに諭すように語りかけるが、少女は相変わらずそれに答える様子はない。
「でも、運も元通りにしてもらわないと」
「だから俺はそれについてまだ信じきれないんだよ」
「どういうことっすか？」
「運なんてそんなもんじゃん。いい時もあれば悪い時もある。悪いことが続くことだってある」
「人間の運は平等だって言うからな。巡り合わせの可能性もゼロってわけじゃない」
「みなさんは実際に被害に遭ってないから言えるんすよ！　俺達が物を盗まれてからどんな思いで今日までやってきたか！」
　大和が少女を睨みつける。
「黙ってないでさっさと返せ！」
　詰め寄ろうとする大和に、今度は少女が睨み返す。
「なんだよ……」
「もう追いかけてくるな」
「返す物返してくれりゃ追いかけたりしない！」
「しつこい男は嫌われるよ」
「え？」
　大和の一瞬の隙をついた少女がその場から姿を消した。