運に見放されたあいつ｜リアクション

運に見放されたあいつ

　お魚などには目もくれず、やって来たのは深海魚コーナー。
「黒いマントなんて普通は目立つだけさ。でもここなら……ね？」
「でも、こう暗いとどこから襲ってくるかわかりませんね……」
　塔ヶ崎が周囲を警戒しながら呟く。
「まさか水槽の中には隠れないだろうし、かえって見つけやすいんじゃない？」
「普通の相手ならな」
　北原の言葉に御剣が注意を強める。。
「何者でもいい。俺のネックレスさえ返してくれれば！」
　さらに奥へ進もうとする吉祥寺だが、
「待って」
　日暮ねむるに止められる。
「ねこったーで集めた情報を確認してみたんだけど、あの少女ってどうも……」
　日暮が言いかけたその時、
「わわ」
　叫び声と共に、ドボーンと水に落ちる音が鳴り響く。
　音のした方へ駆けて行くと、全身濡れた少女が立っていた。
「うわ……」
　その悲惨な姿に吉祥寺が思わず憐みの視線を向ける。
「すっごいドジらしいんだよね」
　日暮の言葉に全員が納得する。
「あなた達すごい……」
「俺達なにもしていないけどねぇ」
　八十八旗が笑いながら言うと少女は首を振った。
「あなたじゃない」
　少女が指差したのは、物を盗まれた面々。
「ん？　俺達？」
　吉祥寺達被害者の面々が顔を見合わせ、そして首を傾げる。
「でも追いかけられるの嫌い」
「そりゃ俺達だって追いかけっこなんてしたくない」
　すると少女が吉祥寺を手招きする。
「なんだ？　返してくれる気になったのか？」
　吉祥寺が近寄ると、少女は自分の前にしゃがむようにジェスチャーで指示。
「なんだよ……」
「占ってあげる」
少女の言葉に、旅鴉と獅子島が身を乗り出す。
　少女はしゃがんだ吉祥寺の額に人差し指をつけた。
「あなたの運勢……大凶」
「は？」
　途端に吉祥寺の頭上に大量の深海魚が降ってきた。
「うわあっ。気持ち悪い！」
　その場でもがき苦しむ吉祥寺に皆が呆気にとられる。
「うう、助けたいけど深海魚はきっついな」
　八十八旗がもどかしそうに呟く。
「深海魚って気持ち悪いっすけどね。でも吉祥寺さんのイメージと違うっていうか」
「問題はそこじゃない。今あいつは何をやったんだ？　なぜ急に魚が降って沸いた？」
「それはわからないけど、あの子の占いはただの手段だね」
　考え込む八神の元へ獅子島が歩み寄る。
「手段？」
「あんなのは占いでもなんでもない。ただ、相手を策に嵌めるための手段に用いているだけだ」