運に見放されたあいつ｜リアクション

運に見放されたあいつ

「君がなぜ人の物を盗むのか。理由があるなら聞かせてくれないか？」
　今度は旅鴉が話しかける。
「もし、正当な理由があるのであれば、私は君を追いかけないことを約束しよう」
「え？」
　大和の声に旅鴉が振り返る。
「君達だって無意味にこの子を追いかけ回すつもりはないだろ？」
「そりゃあ……」
　大和が塔ヶ崎と吉祥寺を見る。
「私はペンダントを返してもらえるのならそれでいいです」
　塔ヶ崎の言葉に吉祥寺も頷く。
「ということだそうだ」
　御剣が催促するように右手を差し出す。
ところが少女はネックレスをマントの中に隠すと、そのまま姿を消してしまった。
「消えた！」
　大和達が慌てて周囲を捜す。
「どうやら返すつもりはないらしいな」
「しかたがない」
　御剣と旅鴉がため息を漏らす。
「でもなぜ、これだけ人がいるのに吉祥寺のネックレスだけを盗んだんだろ？」
「それは本人に聞くしかあるまい。答えてくれるかはわからないが」
「そもそもどこへ行っちゃったのかわからないしねぇ」
　こちらでは八十八旗と八神が悩んでいると、
「マリンパラダイスだって！」
　突然北原が叫んだ。
「なんでわかったんすか？」
「私の腕時計のGPSを頼りに日暮君がね」
　北原が自身のヘッドセットを指差す。
「大和君、絶対に捕まえようね」
「はいっす！」

　マリンパラダイスへとやって来た一行は、先に到着していた日暮と合流。
「ふぁ～」
「うわぁ……こっちまで眠くなりそうなあくびっすね」
「少女はこの中のはずだ。突入するか？」
　日暮の問いかけに大和は頷き、中へ入ろうとする。
「もうすぐ閉園だよ」
　声をかけてきたのは見た目小学生くらいの男の子だった。
「君は？」
「僕はヨル。そんな大勢で慌ててどうしたの？」
　少年はおかしそうに笑いながら尋ねてきた。
「黒いマントの子供がここへ入らなかったか？」
「さぁ？」
「おい、この中にいるのはわかってるんだ。早く行こうぜ！」
　八十八旗の声にみんなが中へ入ろうとすると、
「案内するよ？」
　少年が再び声をかけてくる。
「中はすっごく広いし、やみくもに探したって閉園時間までにその子供を見つけられないよ」
「心当たりがあるのか？」
「その子供は黒いマントを羽織ってるんでしょ？　だったら……」