運に見放されたあいつ｜リアクション

運に見放されたあいつ

「僕は西村成海（にしむらなるみ）。誤解してごめんね」
　瀬田から事情を聞いた西村が謝る。
「瀬田さんと西村くんは確か寝子高の三年生っすよね」
「せ、先輩だったとはのう……。どうして今回は参加したんじゃ？」
「髪飾りを盗られたの！」
　答えたのは瀬田だった。
「レオナにとって大切な物なんだ。それを盗んだあの子供を僕は許せない」
　西村に先ほどのような殺気が甦る。
「なんか怖いっす」
「それだけ二人にとっては大事なものってことさ」
　そう呟いた八神の背中を旅鴉がつつく。
「向こうで何か言ってる」
　旅鴉が向かいの茂みで何やら騒いでいる御剣達を指差す。
「向こうは向こうでこっちを指差してますね」
「おう！　俺らの真似しとる！　こっちもやってやれい！　いえーい！」
　楽しそうに指を差し返す立井と、それに釣られるように差し返す大和。
「違うんじゃないか？」
　旅鴉の言葉どおり、何やらイラついた様子の向こう側から、女の子が一人が飛び出して駆けて来た。
「あれは塔ヶ崎じゃのう」
　こちらへ駆けて来た塔ヶ崎は一同に会釈をすると、
「いえーいじゃなくてそっちです」
　みんなの背後を必死に指差す。
　皆の最後尾に真っ黒なローブに身を包んだ小柄な人物が立っていた。

「やほー」
「あーっ！　こいつっす！」
　大声をあげる大和。
「うん。げんきぃ？」
「うん、元気。じゃねえええ！」
　何かが壊れたかのように叫ぶ大和。
　その様子を静かに見守る一行と、道路の向こうにいる御剣達を手招きして呼ぶ八神。
　合流した皆もじっとその様子を見つめる。
「お前に腕時計を盗られてから、俺がどれだけひどい目に遭ったかわかるかっ」
「お願いですから私のペンダント返して下さい！」
　そんな大和と塔ヶ崎の言葉など耳に入っていないかのように、少女は吉祥寺をじっと見ている。
「なんだ？」
　少女の右手がうっすら光ったかと思うと、その手にネックレスが握られていた。
「あーっ、それ俺のじゃないか！」
　吉祥寺が叫ぶ。
　取り戻そうとする吉祥寺を制して獅子島市子（しじまいちこ）が前へと出る。
「あんた、占いができるんだろ？　あたしも占ってみてくれないか」
　少女は獅子島の全身を見渡す。
「は？　それがあんたの占いってわけかい？」
「よかったね」
「教える気がないのか。それとも……」
　じっと少女を見つめる獅子島だったが、諦めたように引き下がる。

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