運に見放されたあいつ｜リアクション

運に見放されたあいつ

　そこでは数人のメンバーが手を振っていた。
「えっと……誰がいるんすかね？　一応把握しておきたいんで」
「あれは……御剣、塔ヶ崎……」
「あと黒子ちゃんもいるね」
　立井と八十八旗が出した名前を聞いて、自分のメモ帳をチェックする大和。
「御剣刀（みつるぎかたな）君と、塔ヶ崎璃亜（とうがさきりあ）さんと、吉祥寺黒子（きちじょうじくろこ）さんっすね。一応挨拶しておこうかな」
「あとでいい。それよりもターゲットがいつ現れてもいいように注意しろ」
「今さらっすけど、あの少女ってどうやって現れるんすかね？」
　大和が思い出したように呟く。
「どうやって？」
「ほら、手も触れずに人の物を盗んで消えちゃうような奴でしょ。まさか道具一式持って歩いて来るとも思えないんすけど……」
「それは……ねぇ？」
　八十八旗が八神を見る。
「心配ないだろ。柿内の話が確かであれば、その少女は人ではない何か。どんな登場のしかたをしても驚きはしないさ」
「例えばいきなりあの場所にパっと現れても？」
「想定内だ」
「うおお！　かっこいいっす！」
　
　そして待つこと数十分。
「そろそろ柿内くんが出会った時間ですね」
　宮祀が時計を確認する。
「あの子、さっきからあそこで何をしているんだろ？」
　八十八旗が目撃現場から少し離れた場所で、自分達と同じように周囲を警戒する女の子を見つける。
「もしかするとあの少女の仲間かも。捕まえてくるっす！」
「迂闊に近寄っていいものかのう」
　立井の声も聞こえてないのか、大和は元気に駆けて行った。
　皆が注意してその様子を見守る。
「ん？　謝ってるみたいだけど」
「あ。一緒にこっちへ来ますよ」
　大和は女の子と一緒に戻って来た。
「この人、参加者っす。瀬田レオナ（せたれおな）さん」
「よろしく～」
　瀬田の挨拶にようやく緊張した空気が和らぐ。
「瀬田さんはあそこで何をしていたんですか？」
「ちょっと怪しかったよね」
　八十八旗が苦笑する。
「あたし達は……」
　瀬田が答えようとしたその時、
「レオナー！」
　遠くから叫び声。
　凄い形相でこちらへ駆けて来る。
「人さらいは誰だぁ！」
「ストップ！」
　そんな男を止めたのは瀬田だった。

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