ねこ……。｜リアクション

ねこ……。

　自宅に隣接させたオレンジ動物病院の獣医師、ジェレミア・ベルトーニは咲き誇る庭の花々を見ていた。
　とっぷりと日も暮れ、忙しかった一日も終わりに近づいている。
「ん……？」
　ふと細い鳴き声を耳が捉え、ジェレミアは窓を開けて身を乗り出した。
「先生どうしましたか？」
「聞こえない？　鳴き声」
　表へ回れば、生後数日、目も開いていない猫が４匹。ダンボールに入れられて、もぞもぞしている。
　母猫を呼ぶ鳴き声に、ジェレミアは溜まらず箱を腕に掻き抱いた。
「こんなに可愛い子達を、捨てるなんて……！」
　動物病院の前に、犬猫の子が置き去られるのは珍しい事ではない。
　けれども今日のジェレミアは、何故か感傷的で、溢れる涙を止める事が出来なかった。
「大丈夫、俺がちゃんと面倒を見てあげるからね」
　職業柄、育てるに必要な物は全てある。ノウハウだってバッチリだ、専門だもの。
　み゛ーみ゛ー鳴く仔猫を拾って戻ってきた先生に、病院スタッフは温かい目を向ける。
　全員が協力的だった。
　ジェレミアも患畜が居ない時は、こまめに世話をした。
　綺麗に拭いて、お湯を入れたペットボトルで体を暖めてやり、ぬるま湯で湿らせたガーゼで、排泄のお手伝い。
　それからミルク。幸いどの子も、飲めないほど弱ってなかった。
　ぽっこりとお腹が膨れると、安心したのか眠り始めたり、機嫌の良い鳴き声をあげた。

「ふふ、まだ猫っぽくなくてネズミみたい」
　ピンクの体に、うっすらと産毛を被る仔猫の細い脚は、ジェレミアの指ほどの太さもない。
　ふわふわと曖昧な輪郭を描く仔猫の体を、ジェレミアは優しく撫でた。
「君はちょっと、目やにが酷いね……すぐ済むから、ちょっと我慢してね」
　目薬を差してやると仔猫は吃驚して、またみ゛ーみ゛ー鳴き始めたが、しばらく撫でてやると落ち着いた。
　掌に納まってしまう小さな命。その可愛らしさに、この子達を守ってやらねば、と若き獣医師は決意した。

「乳母にゃんが居ればもう少し楽、というか。赤にゃん達のためにも、良いんだけれどね、色々と」
　ジェレミアも生後２カ月程の、可愛いさかりの仔猫を飼っている。
　島に来た時、似た経緯で迎えた、灰色ソリッドカラーの雑種で名前は『すみ』といった。
「月齢近いし、男の子だからお兄にゃんだね。もう少し赤にゃん達が育ってから対面させて、折り合いが良ければ、あの子からも猫の社会性を身につけて欲しいな」
　仲間同士で適切な距離感を掴むのは、とても大切な事だから。

　そうして新しく迎え入れられた家族に、ジェレミアはたっぷりの愛情を注いだ。
　猫達への狂おしいほどの想いは、翌日には消えてしまっていたけれど。
　愛しい気持ちは、変わらない。

　夜中でも入院中の患畜たちの様子を見る傍ら、数時間おきに仔猫達１匹１匹に授乳し、世話を焼く。
　この子達も、いつかは里子に出さなきゃならないけれど。
「今から、ポスター作らなきゃ。きっと良い飼い主さんを、探してあげるからね」
　ジェレミアは気合を入れると、白衣の袖をまくった。

　布にくるまれて、すやすやと眠る生まれて間もない仔猫達の未来に、ジェレミアは願いを掛ける。
「赤にゃん達、早くおっきくなぁれ」

　　　終

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あとがき

担当マスター：メシータ
ファンレターはマスターページから！

　猫スキー勇者の皆様、お疲れ様でした。
　このような結果になりましたが、いかがでしたでしょうか？

　ガイド作成時、この内容で抽選になるとは思いませんでした。
　皆さん、本当に猫がお好きなんですね。

　そんな皆さんに、共通称号を進呈致します。

　『猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫』
　『ぬこぬこぬこぬこぬこぬこぬこぬこぬこぬこ』
　『理性がストレイキャット』
　『ぬこを見守る（邪な）目』

　お好きなのを選んで、名乗ったり名乗らなかったり、ご自由にどうぞ。

　では、この度はご参加まことにありがとうございました。
　少しでも楽しんで頂けましたら、幸いです。

　お送りしたのは、変態レベルの猫好きメシータでした。

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