暴走ベビーカー？！　ちょっとまって赤ちゃん！！｜リアクション

暴走ベビーカー？！　ちょっとまって赤ちゃん！！

「赤ちゃんの泣き声？　それに悲鳴？！」
　読者モデルのお仕事でアウトレットモールへきていた最上るるかが、赤毛を揺らして振り返る。と、そこには大泣きする赤ちゃんを乗せて暴走するベビーカー（＋ショッピングカート）の姿が。よく見ると、寝子高の生徒らしき少年少女も巻き込まれている。
（え？　何がどうなって……？）
　まさかショッピングカートとスケートボードが引っかかっている上、ショッピングカートにはふわりと没、それを止めようとして引きずられる侑を見ようとは思わなかった。
　タイミングよく休憩に入る撮影現場。赤ちゃん達のピンチにるるかはねこったーであの赤ちゃんが牛瀬教諭の息子だと知る。そこで近くのスタッフがバイクに乗っていたのを思い出し、ぱっ、と腕を掴む。
「ちょっとそこの人、バイク乗っけて！　このとーり、一生のお願い！」
　目をウルウルさせて、愛らしく強請る彼女の姿にスタッフは「しょうがないな」と照れながらヘルメットを渡すのだった。

「ふぅ……」
　御剣刀は服の入った紙袋を手に安堵の息をついていた。日頃貧乏を痛感している彼としては、タイムセールは貴重なモノだ。途中で一緒になった御鏡聖と共に戦利品……もとい、購入した衣料品を確認し、満足げに頷く。
「タイムセールはまだ続きそうですね」
　出た店の中では、まだ大勢の人が買い物を続けている。戦場を思わせるその中によくいられたものだな、と思いながら刀は自販機へと歩み寄った。その時だ。聖が声を上げたのは。
「あ、あれは……きゃあっ！？」
　咄嗟に聖を引き寄せる刀。既の所で激突をまぬがれた聖であったが、刀は呆然と走り去る何かを見つめてしまう。
「ベビーカー……か？」
　しかし、只事ではないと感じ取った刀は聖と共に走り出す。体の弱い聖は遅れそうになるも、刀のおかげでどうにか追いついた。
「？！　桜庭、これはどういう事だ？」
「牛瀬先生の赤ちゃんが……」
　友達である円が彼へ事情を話す傍らで、聖もまた必死になる巧に声をかける。
「あの、すみま、せん！　せっ、先生…えっと、奥様はどこにいらっしゃる……んですか？」
「アイツは上の子供達と映画を見とった筈や。今連絡しても電話に出ぇひん」
息を切らせつつも問いかけると、巧が振り返らずも聖に手を貸しながら答える。カバンがないかと思ったが、まだベビーカーに引っかかっているままのようだった。
　そんなやり取りがありつつも、刀は仲間と追いかける。剣術と剣道部で鍛えたこの足を舐めるな、と……。

　勅使河原悠（てしがわら　ゆう）は、参考書を買いに来た奈良橋博美と何気ない立ち話に興じていた。……が、騒動を聞きつけてやってきた。ねこったーからの情報を元に先回りしたのが功をそうしたのか、ベビーカーが走ってくるのが見えた。
（タイミングよく飛び移らないと、赤ちゃんを怪我させる）
　博美が飛びつくタイミングを見図るその横で、悠は右目を隠してろっこん『嘱目する実正』を発動させる。そして浮かんだのは、赤ちゃんが泣き出すのと同時に動き出すベビーカーの、ぼんやりとしたイメージ。
「あの赤ちゃん……もれいびだったんですね」
　その呟きに博美が「そうだったのか」と頷いていると、七音侑が転げそうなのが見えた。タイミング的にも彼女を助けるのは『今』だろう。
「今行く！」
　博美が走る。距離的にろっこん『トンビの飛翔』を使わなくても大丈夫だ、と判断し、力強く地面を蹴り、侑の手を取って反対側の道へと連れて行った。
「それでもまだあと３人ですね」
「追いかけよう。……っと、その前に……」
　悠の言葉に博美は頷きつつ、ぜぃぜぃと言っている侑をどこかで休ませられないか、と休憩できる場所を探す事にした。